右手に銃を 左手に愛を














 快晴。
 風が少しだけ冷たくなってきたとはいえ、太陽の下、微睡むにはちょうどいい。
 授業中という事もあり、今屋上にいるのは皆守と葉佩、そして───。


「どういうつもりだ?」


 はじめて見る顔。
 少なくとも直に顔をあわせたことはない。
 けれどその声に、何かを刺激される。


「忘れ物を届けに」
「───九狼?」


 どこか面白そうな気配を孕んだ声が耳朶をかすめて、いつの間にかその腕の中に捕われている事に気づく。
 葉佩九狼。数週間前に転校してきた自称《宝探し屋》
 気がつけば共にいる事に違和感を感じなくなっていた、気の合う同級生。
 その声と。 


「おいッ───」
「何が目的だ?」
「目的?」

(何なんだ?)

 少なくとも5分前は平和だった。
 いつものように授業をサボって屋上で微睡んで。
 飯でも食いに行くか。という流れになったところで屋上の扉が開いて何の躊躇いもなく葉佩に銃を向けた男。
 そしてそれに慌てる事もなくむしろどこか楽しげに皆守を腕に抱えたまま銃を構える葉佩。
 茶色の、手入れなどほとんどされていないようなぼさぼさの前髪の下から覗く目は怒気を隠そうともせず、葉佩を睨んでいるが、肝心の葉佩はどこ吹く風だ。
 眼鏡の奥の瞳も腰にまわされている腕も布越しの鼓動もいつもと変わらない。
 けれど。


「《秘宝》」
「ふざけるな」
「それとも、」


 からかうような響きの声と硬さを失わない声。

 
「お前に逢いに───」
「!」


 ほんの。わずか。
 揺らいだ瞳に。なぜか。

 何かが。


「───と、言ったら信じるか?」
「誰がッ!」
「……おい」


 撃たれるぞお前。
 と、思いつつもやはりどこか緊張していたらしい身体から力を抜く。
 互いに銃を構えその狙いを外していないとはいえ、どちらも───少なくとも葉佩からは敵意も殺意も感じない。
 真っ昼間に学校で殺傷能力を持った武器を見る事も、それを持っている人間が間近にいることも慣れてしまった日常を嘆けばいいのか笑えばいいのか、少しだけ複雑な気分に陥りながらも皆守はゆっくりとその腕から離れた。

 本当に危険な時、この男は問答無用でそれを排除する。
 遊びも躊躇いもそこにはない。
 
 だから。


「いつまで遊んでんだ……つーか何なんだお前ら」
「そいつと一緒にするな」
「ほら、」

 忘れ物だ。

 と、皆守を離した腕が閃く。
 反射的にそれを受け取った男がわずかに目を見張る。
 手に収まったままのH.A.N.Tと葉佩の間をゆるゆると視線が動いて。
 険の抜けた顔。
 ようやくまともに見る余裕のできた皆守はその貌に眉をひそめる。
 声。顔。まるで。


「パスワードぐらいいい加減かえろよ、愚弟」
「黙れ」
「……弟?」
「久しぶりの再会だってのにつれないな───九龍」



















つづく(爆)
とりあえずバッキーは『九堂龍(くどう りょう)』という名前で3-D所属。
二人が構えてたのはMAYAちゃん(ちゃんじゃねぇ)そしてクロさんは何気にセクハラ気味。それに慣らされちゃった感のあるアロマ。頑張れバッキー(他に言う事は?).......2005.11.06