甲太郎の身体はきれいだ。
 俺と違って傷なんてほとんどない(だって俺が許さないから)

 本人は「鍛錬なんて面倒くせぇ」なんて嘯くけど(少なくとも天香の頃はほんとにまったくやってなかったらしい)、元々素地はあって(子供の頃にやってたらしい)、一応、今はそれなりに、俺のいないところで鍛えてはいるようで、無駄な肉の一切ない、タイトに絞られたきれいな身体。
 はじめて見た時(はさすがに吃驚したけど。だってあのだるだるアロマが!)とかわらないラインにうっとりしていると、

「……なんだよ」
「それ」

 着替えの手を途中で止め、甲太郎が胡散臭げな視線を落とす。
 いくら男同士とはいえ、さすがに気になったらしい甲太郎の、脱ぎかけのシャツの下、脇腹にうっすらと残っている大きな傷から俺は目がはなせない。
 せっかくのきれいな肌に勿体ない。と言えば、その所為で死にかけたはずなのに「阿呆が」の一言で片付けるのが甲太郎だ。
 その傷を見る度にその傷をつけた人間とその傷をつくるハメになった経緯を思い出す。
 経緯も何も俺だ。
 俺の所為で甲太郎が死にかけた。
 間抜けな事にその瞬間は覚えてない。
 けれど。

「痛くない?」
「……何年前の傷だと思ってるんだ」
「俺は痛い」
「そうか」
「うん」

 着替えの終った甲太郎が近づいてくる。
 目の前。
 長い足が目に入って。

「うわっ」
「鬱陶しい」 
  
 蹴られた。

「……だってさー」
「お前な。いちいちいちいち」
「勿体ないー俺のなのにー」
「───誰がお前のだ」

 口調のわりに顔は穏やかでだから俺は調子乗って手を伸ばす。
 どうせすぐ脱ぐんだからわざわざ着替えなくてもいいのにねー。と言ったら殴られたけど、痛くはなかった。














あれ、らぶらぶ?(黙っとけ)
傷をつけたのは喪部かクロさんかはお好みで(笑).......2005.11.06