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「……」 自室に誰か他の人間の気配を感じて葉佩は扉の前でそっと、ため息をつく。 気がつけば一緒にいることが多いとはいえ。 「……どうしているのかな」 葉佩の身体にあわせてわざわざとりよせた大きめのベッドで眠っているのは。 「甲太郎」 クエストだけだから。という理由で《夜遊び》に誘わなかった年下の友人が、何故、葉佩の部屋でベッドを占領して眠っているのかと言えば。 (そういえば気に入ったとか言ってたか……) 深夜ということもあり、できるだけ音を立てないように装備を外し、僅かに強張った身体を解しながら、ベッドに近づく。 いつもなら部屋の前に立った時点で気づくはずの男は、癖だらけの髪を枕に散らしながらどうやら熟睡しているようで。 そっと枕元に座った葉佩が、幼さの残る寝顔を伺っても目覚める気配もなく。 月明かりの下、仄かに明るい光を浴びて、皆守はゆるやかな呼気を繰り返しながら眠っている。 その穏やかな表情に、葉佩は苦笑未満の笑みをひっそりと浮かべる。 《お前の部屋だとよく眠れる》 と、めずらしく素直に感情を吐露した、皆守の、どこかやわらかい貌と、それでいて僅かな自嘲を含んだ微笑みが。 (いや、そうじゃない───) 問題は。 そんな、皆守を。 (……いくらなんでも洒落にならないぞ) 抱きしめて。 (男が男に、) それから。 (……しかも子供に、) そのやわらかい嘘を重ねる唇に───。 「甲太郎……」 「……」 「甲太郎、」 「…………」 起きろ。 起きて。 今すぐ。 「───頼むから」 目を覚ませ。 そして目の前の男の本性を知れ。 さもなくば。 「…………ん」 「……こう、」 「───うるさい。寝ろ」 「……」 願いが通じたのかあるいはただの寝言か。 おそらくただの寝言であろうが。 低い掠れた声が静寂に溶けてすぐに寝息に変わる。 普段の、そして彼の負うものからは考えられないほど無防備な。 (冗談じゃないぞ) 俺はお前が思うほど。 「……寝ろってどこでだ?」 床で眠ること自体に抵抗はないが。 すぐ隣りで。 眠る。 安心しきった、その。 「……冗談じゃ、ない」 いつのまにか馴染んだ花の移り香に。 となりにあることが当たり前になったその存在に。 そのぬくもりが。 ぬくもりだけでは。 (本当に、) 近い将来。 遠くない未来。 あるいは今この瞬間に───。 「……なあ、甲太郎」 俺はお前が思うほど。 |
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この後葉佩さんはひとりクエストde貫徹です。.......2006.05.21 ↑(ご意見ご感想ボケツッコミなどありましたらお気軽にどうぞ〜) |