夜。天香の生徒たちは自室に籠もりそれぞれの時間を過ごしている。 皆守もまた自室で一人時間をつぶしていた。といってもベッドを背に今まで寝ていたのだが。 時間も深夜に近づき肌寒くなって目覚めた皆守は改めてちゃんと寝ようと立ち上がった。丁度そのとき携帯が鳴った。 誰だと手に取るとクラスメートの葉佩からだった。またこんな時間から墓地に行くから付き合えってんじゃないだろうな。という嫌な予感を抱え、それでも出てみる。 「なに?」 『あ、甲ちゃん、今何かしてる?』 「別に。何か用か?」 『え、あーうん。まぁー・・・・・』 その口調から簡単に向こうの姿が想像できる。 しどろもどろしながら頭を掻いているだろう。こいつの困ったときの癖だ。 『いや、前から気になってたんだけど。でもこういう事、面と向かって聞くのも変かなぁーと思ってみたり、みなかったり・・・・・』 聞いているうちに、歯切れの悪い相手に苛立ちを感じる。 「だから何が言いたい。端的に言え。切るぞ」 『甲ちゃんってさーよく屋上にいるよね。あの場所静かでいいよね。あんまり他の生徒も近づかないし。天気がいい日は暖かいし』 「あぁ、まーな」 なんだそんなことか。と皆守は携帯を片手にしながら手近にあった雑誌を拾い上げる。 遺跡の謎 特集号。と持ち主のイメージ通りの見出しが飾られている雑誌。この間、あいつがこの部屋に遊びにきた時に忘れていったものだ。 別に興味があるわけではなかったが、暇つぶしには丁度よかった。 再びベッドを背に座りなおすと膝の上にその雑誌を置き適当にページを開く。 『それにラベンダーの香りも好きだよね。今じゃラベンダーの香り=甲ちゃんなイメージみたいなさぁー』 またも訳の分からない話に「何だよ、それ」と軽く笑って雑誌の記事を眺めていた。 別に時間は余るほどあるのだからいいのだが。 『あ、あとカレーも好きだよね。料理は僕も多少するけど、甲ちゃんの場合スパイスとかにもこだわっているし。自分で料理するの結構好きでしょ』 「ああ、好きだな」 何をいまさら。と思いながら、ページをめくる。 暫らくそんな一方的な会話が続いた。 残り少なくなったページをさらにめくりながら記事を流し読んでいると、葉佩がまた話題を変えてきた。 『だったら甲ちゃん、俺も好き?』 「ああ、好きだな」 今までの流れから生返事を返して、ハッと我に返る。 『・・・・・・・・・』 「・・・・・・・・・」 『ヘヘヘ、そうか。そうなんだ。良かった』 その声音から携帯の向こうで喜ぶ葉佩の顔が目に浮かぶ。 「いや・・・・違ッ・・・・」 皆守が立ち上がり慌てて否定しようとしたが、相手は聞く耳を持たない。 『俺も好きだよ、甲太郎。じゃーオヤスミ』 「おい!待てッ!!九ちゃん!!」 一方的に切られた携帯を眺めて呆然とする皆守。 明日どんな顔で逢えばいいんだ。つーか結局なんの用事で電話してきたんだ。あいつは。 そんなことを考えながら、皆守は頭を抱えて再び床にしゃがみ込んだ。 |
『P*Life Plus』の紅月さまからいただきました( ´ ▽` )ノ 個人的hitは『遺跡の謎 特集号』(笑) そしてうっかりに慌てるアロマさんの可愛いこと可愛いこと ご本人様は「こんな奴らでいいんだろうか?」と仰ってましたがこれがいいんです。 というわけでこれからもこの道を突き進んで下さい。 そして最後になりましたがありがとうございました! 2006.11.08 |