「5分でいい。俺に時間をくれ」
「……」

 テロリストを拘束した部屋の前でジャックがトニーに言う。

「……またですか」

 その真剣な目と口調に、その後ろに控えているチェイスの方が緊張するが、言われた本人はどこか呆れたような声で隣りに立つ男に視線をやる。

「いままでこれで落ちなかった奴がいるか?」
「───五分ですよ」
「充分だ」

 諦めたような声音で、それでも『諾』とこたえた上司に、一瞬だけ笑みを浮かべ、彼は服を脱ぎはじめた。



※※※



 わずかな音を立てて開いた扉の隙間から入ってきたそれに、拘束されたままの男は息を飲む。
 
 金色の毛皮をまとい、澄んだ瞳でこちらを見上げるそのいきものは、音を立てる事もなく近づいてきたと思ったらそのまま、男の足に擦り寄り、とん。と、身軽に膝の上に飛び乗ってきて。

「なう」

 小さく鳴いた。

「───ッ」

 そして。
 硬直したまま、けれど今まで何も伺えなかった目に葛藤の光を浮かべる、その男の目をじっと見上げたまま。

「仲間はどこだ?」

 縞模様の尻尾をぱたりと揺らした。



※※※



「五分もいらなかっただろう?」
「そうですね」
「……」
 
 金色の猫のかわいらしい仕草にあっさりと陥落したテロリストの言葉の真偽を確かめるべく、それぞれが忙しなく動き始めた中、部下の腕の中で上機嫌に喉を鳴らす猫───ジャック・バウニャーがぱたぱたと尻尾を揺らしながら、部下達に指示を出すトニーに声をかける。
 それにこたえる声はいつにも増して素っ気なかったが、めずらしい事ではないので気にしない。というか相手の機嫌が良かろうが悪かろうが気にしない上司だがその部下は気になるところがあったので。

「ジャック」
「どうした?」
「素朴な疑問なんですが───」

 奴が猫が嫌いだったらどうしたんですか?

「それならそれで───、」

 吐かせる方法はいくらでもある。

「そうですね」
「……」

 もぞもぞと。
 腕の中で丸くなる猫と、ディスプレイに映し出される情報から目を離さない上司に。
 ここ数ヶ月で学んだ事をいかし、チェイスは沈黙を守った。



2008.02.22
猫の日だからー。

C:にゃー


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