死神の涙-出会い篇-
その男を見たのは去年の夏。
地元の警察や捜査官が慌ただしく動く現場でただ一人、ひっそりと佇んでいた男は、ギデオンがその存在に気づいたその一瞬後に消えた。
だから幻だと思っていた。
その夜、用意された部屋に現れた彼を見るまでは。
「お願いがあります。この件から手を引いてください」
「訳を、訊いても?」
「残念ながら、あなた達の世界のルールからはみ出した者を、あなた達のルールで裁くことは出来ないんです。どんなにあなた達が優秀でも犯人は捕まらない。永遠に」
「それが君の仕事だから、か?」
「はい」
「……」
部屋の隅、手元の灯りの届かない薄闇の中で、一際濃い影は微動だにしない。
短い髪。濃い色の瞳。黒いスーツに蒼いシャツ。濃紺のネクタイ。
空調がきいてるとはいえ、夏の残滓を感じさせない気配を纏った男の足元に影はない。
「ひとつ、訊いてもいいかな?」
「僕がこたえられる範囲なら」
「名は?」
「アーロン・ホッチナー」
真っ直ぐ、ただこちらを見つめる視線。
静謐。あるいは───。
「死神です」
2008.11.03
とりあえずギデオンさんとホッチナーさん出会い篇。
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