極々稀にBAUにも暇な日がある。
しかし人間暇な時はろくなことをしない。というか暇つぶしの為なら命をかけるという本末転倒なことをやりかねないのがBAUの面々で。
「はいじゃあ罰ゲームはリードに決定ー!」
「ええー!」
「やーほんとお前、思った通りのことしてくれるよなー」
「ではガルシア、」
「あの扉を開けて入ってきた人にキス」
「〜〜〜!!!」
「よーしやれ、リード」
「大丈夫、骨は拾ってあげるから」
「カメラもバッチリ!」
「頑張ってねリード」
勝者ガルシアが眼鏡をキラリを光らせデジカメを構え、モーガンが超爽やかな笑顔で敗者リードの肩をポンと叩き、JJとプレンティスも穏やかな笑顔で無責任に言い放つ。
ほんとにこれでいいのかBAU。
つーかいいわけねえだろう。
とツッコミを入れる人間は幸か不幸かおらず、むしろ関りたくないオーラを背負った一般職員達が自分の職務を全うしている間に、ターゲット、否、リードの罰ゲームに巻き込まれるであろう人物が硝子の向こうからこちらに近づいてきた。
「うっそー」
「あっちゃー……」
「わーお」
「あっはっは」
「───ちょ、え、ホントにするの!?」
「「「「勿論」」」」」
できれば冗談のわかる女の人、せめて、何があっても笑って許してくれそうな誰かーという、リードの祈りは通じなかったらしく。
いつも通りの表情でファイルの束を抱え扉に手をかけたのは我らがBAUのチームリーダー、アーロン・ホッチナーその人で。
罰ゲームっていうより死刑宣告じゃないの!?と青ざめた表情で慈悲を乞うリードに皆、慈悲深い微笑みを讃えたまま『ほらさっさといってきな』と促す。
まあ、別にいやならやらなくてもいいんだけどなーとは心の中だけで呟きつつ、我らがドクター・スペンサー・リードの類い稀なる頭脳が果たしてどんな末路───……結論を導きだすのかを見守っていると。
「うぎゃ」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……前は見て歩けリード」
(突進した)
(何もそこまで馬鹿正直に)
(てかホッチぜんっぜん動じてない?)
(とゆーか何をされそうになったか気づいてもいない?)
「……ふわあい」
「返事は簡潔に」
「…………はい」
「それで、」
「なに?」
「───誰に何をどう唆されたんだ?」
「!」
気づいた?
っていうか気づいてた!?
うっそだー事件以外はどにぶちんのあのホッチが!?
天変地異の前触れ?
「え、あ、えーっと……」
各々勝手なことを胸中で叫びつつ、相変わらず真面目な顔のホッチと、キスをするには些か勢い良く突進し、眼前に差し出されたファイルにぶつけた鼻を撫でつつ挙動不審なリードを置いて散開する。
対岸の火事はあくまで対岸から眺めるものであってそれに巻き込まれたくはない。
てゆーかせっかくの平和な時間を壊されたくないし?
と、どこかの天才が聞けば『なにそれ!僕の平和を壊しておいて!』と憤慨するであろうこと思いながら。
「ご、ごめんなさい」
「謝らなくていいから事情を話せ」
「ええっと、ちょっと暇だったから皆で……」
「そうか、暇か。それはよかったな」
「あー、うー」
いったいどこの学校の教師と生徒だ。
な、会話を背中に、今度はいったい誰で暇つぶしをしようか。
と───。
「あ、ギデオン」
「おつかれさまでーす」
「今お時間ありますかー?」
「ちょっと聞きたいことが……」
極々稀に。
BAUにも暇な日がある。
そしてまあ。
概ね平和である。
「いいか、よく聞けリード、」
「はい……」
たぶん。
2008.10.14
『ホッチにキスをしようとするリード勿論玉砕』ネタでした(え)
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