「───いやならやめます」
「……」

 部下の、その声の静けさとは裏腹に、彼の肩を掴む力は決して弱くはない。
 縋るような手と透明な硝子の向こうからこちらを見上げる目に浮かぶ光の。

「ダニー、」

 押しつけられた壁の冷たさと布越しの熱に、ここが職場である事実が目の前の青年の存在に揺らいで。
 ゆっくりと、視界を閉じる。
 拒絶するような、誘うような───ただ、すべてを委ねるサインを読み取って触れてきた熱が一度、二度、三度目に深く混ざりあって、離れる。

「───すみません」
「ダニー?」

 不意に告げられた言葉に現実に引き戻される。
 足早に消える背中と中々消えない熱を残して───。



2007.11.30
ダニーさんが逃げたのはチューだけじゃ済まなくなりそうだったからですよ。

C:ヘタレばんざい


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