仕事でくたくたのへろへろになってようやく帰ってきた家(とはいえ厳密には自分の家ではないが)のソファに男が一人横になっている。という図は甚だ心臓に悪い。
たとえそれがよく知った人間だったとしてもだ。
「……鍵は?」
「開いていた」
嘘だ。
仮にも国家の機密に関る人間の部屋にそうやすやすと侵入されては問題だ。
それが例え同業者であっても。
「トム」
「……」
「……トム」
「……」
「…………ジョーイ」
「ん?」
「どうしたの?」
「別に」
「ならおとなしく“家”に帰ったら?」
「帰りたくない」
「……」
「なにがあったの」
ジョーイ・マシューズという名の銀行員は神経質なところがあり、人付き合いはほとんどなく、いつもまっすぐ自宅へ帰る面白みのない男である。
そんな男が連絡も入れず灯りもつけず他人の家に入り込み着替えもせずただソファに横たわっているのは異常事態だ。
ジョーイ・マシューズとしてもトム・クインとしても。
「……トム」
「上司の細君の誕生日パーティーとやらに強制参加させられた」
「よかったじゃない」
元々その上司に近づく為の潜入調査だ。
仕事ができて真面目で暇を持て余している美貌の細君の誘いに乗らない堅物のジョーイが、仕事以外でも上司の目にとまったわけだ。
「飲み物に薬を混ぜられたりしなければな」
「……」
「驚いてパニックに陥ったジョーイ・マシューズはなけなしの力を振り絞って上司を突き飛ばしそのまま妹の部屋に転がり込んだ」
「……」
「三日くらい無断欠勤してやりたいところが、仕事が命のジョーイは病欠の連絡を入れ一日だけ休み仕事に戻る」
「……」
「ちなみに病欠の連絡を入れるのは様子がおかしい兄を心配した妹ということになっているからよろしく」
「……」
よろしくも何も今回の件にゾーイは関っていない。
「大丈夫なの?」
「ああ」
「ホントに?」
「たぶん」
「あのね、トム……」
「安心しろ。あの変態の趣味に一々つき合うつもりはない」
素っ気なく、まるで他人事のように断じる声はいつも通り。
ただ閉じられたままの目蓋の下の瞳は一度も自分を見ていない。
白いシャツに解かれたままのネクタイ。
濃紺のスーツにテーブルの上に無造作におかれている眼鏡。
短い髪の下の容貌はどこか繊細なラインを描いていて。
「僕の好みでもないし」
「……」
一瞬でも心配した自分が馬鹿だった。
というのがゾーイの正直な心境だったが。
「じゃあどんなのが好みだっていうの?」
「ハリー」
「……」
「冗談だ」
2008.10.18
ホントに冗談なのおにーちゃん。
とゆーわけでうっかりMI-5小ネタ。
トムトムって何考えてるかわかんないよーねという……。
てかこの後帰ってきたダニーにも同じ嘘ついてうっかり信じかけたダニーをプチ説教したり(スパイなのにそんなに簡単に騙されていいのか云々つかまあ憂さ晴らしだね)、トムトム曰く『変態上司』にそこはかとなく近づいてちゃんと任務達成してみたり(実は僕も……的な空気を匂わせといて情報を仕入れたら即撤収)
ちなみにこのトムトムはノーマルですよ。女の人好きですよ。でも仕事なんで頑張ったんですよー(チューすら最初の不意打ち以外はさせてません)
つかお国の為なら身体を使うことも躊躇わないトムトムでもいいんですけど。男女問わず。
つかトムトムって基本的に寂しいっていうか人肌が恋しいっていうかそんな気配が……たぶんいっつも自分を偽ってるから(仕事で)誰か他の人間の体温を感じることで“自分”を認識してるところもあるのかなーとか。
だからそのうち一夜限りなら男でもかわらんかーとか開き直っちゃっても可(え)
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