「ボーンズ、」
「どうした食べ過ぎか喧嘩か襲われたかホームシックか仮病かどれだ?」
「それどこの子供?」
「目の前にいるが」
「……」
「……」
一瞬、生暖かい風が2人の間を抜ける。
喧噪と静寂の間のような独特な雰囲気を持つこの場所がレナード・マッコイの職場だったが、そこに彼の年下の友人───が今やこの艦の艦長だというのだから世の中はおかしなものだ───が姿を現すことはめずらしいことではなかった。
「さっきスポックに殴られて」
「学習能力がないなお前」
100%艦長が悪いのだろうと言下に切り捨てつつ、それでも一応ぺろーんと捲り上げられた制服の下から現れた腹部を診察する。
「どうってことない」
「そんだけ?」
「2、3日はおとなしくしてろよプライベートでは」
「……」
「だいたい何をどうしたらあのヴァルカン人に殴られるなんて奇特なことになるんだ」
「さっきちょーどあいつの部屋の前を通りがかったついでにモーニングコールをしてやったらこうグーで……」
「具体的には何をやったんだ」
「えーあー……ロック開いてたから中入って近づいても起きないから乗っかかって目が覚めたから『おはよう』って言ってこうチューをしたら腹にグーが……」
「まさか舌まで入れたとか言わないだろうな」
「何言ってんのボーンズ何が楽しいのそれてか俺まだ死にたくないし清く正しくデコチューですがデコチュー……なのにあの悪魔真顔で腹に一発くれやがって……」
「……なあ、俺はせっかく乗った艦の艦長が副長に殴られて死ぬっていうのも見たくないし、友人が阿呆なことを仕出かして馬鹿な理由で死ぬっていうのも見たくないんだがたとえそれが自業自得でも!」
「次はヘマしないから大丈夫だって!」
「待てお前それはまたやるって───」
《艦長、至急ブリッジにお戻りください。繰り返します───》
「あ、悪い。逃げたのバレ……違った休憩終わったから戻るわ俺」
「だから待て!お前暇だからって悪戯に命かけるのはやめろこの馬鹿!というか色々聞き捨てならないことをさらっとぶちかまして逃げるな!」
副長自らの艦内アナウンスが聞こえた途端、あっさりと医療ベイから出て行った艦長の後ろを医療主任が追い掛ける。
艦長の命と副長の精神安寧とブリッジの平和と艦の秩序を知らず背負いながら。
つまり今日はとても平和な───。
「スポック!」
「まてやめろ───」
エンタープライズだった。
2009.11.19
最後のせんちょーはわんこのターゲットロックオン状態だと思っていただければ。
てかどんだけ幼くなってるんだか。という気がしないでもないですが、ST11若船長と若副長とおとーさんドクター(あれ?)
ちなみに気持ちはいつも副長×船長。
てか作中は『艦長』ですが(字面で)

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