エンタープライズの新しい艦長はよく姿をくらます。
 若いからか、それとも性格か。
 おそらく両方だろうが。

「───艦長」
「……ん、」

 猫でもあるまいに。
 なぜか、気がつくと消えている我らが艦長の“本日の転寝”の場所は配管がむき出しになったままの機関室の一角だった。

「ジム、起きろ」
「……おはよう?」

 騒音と振動と。
 決して寝るのに適した環境ではないが、年下の友人はどこから持ち出したのか毛布に包まったまま───見えているのは淡い色の頭頂部だけだ───もごもごとこたえる。
 
「……今日はボーンズの当番?」
「……わかっているならふらふらと勝手に消えるな馬鹿者が」

 のそりと起き上がって、寝癖のついた頭を一振りすると、まだ水気の残っている青い瞳がこちらを見る。
 
「でも誰かがちゃんと見つけてくれるだろ?」

 いつも。
 と、わらう貌は無防備だ。
 この艦の頂点と中心にいる男には不釣り合いな程。

「───もし誰もお前を見つけられなかったらどうするつもりなんだ」

 甘えと切り捨てることもできるが、彼が不意に姿を消すのは、比較的にゆとりがある時だ。時間も仕事も。
 最初はそれなりに緊張感やら焦燥感があったが、今では消えた艦長を捜すことが艦員達の一種の気分転換になっているのも事実だ。
 とはいっても艦員総動員することはできず、そうなると消えた艦長を捜しにいける者は限られてくる。
 そして、限られた者達は概ね重要なポジションについていて、ブリッジについている時は余程のことがない限り、そこから離れることもできず。
 そうなると、なぜか、なぜかそういう時に限って、特に手術もなく重症患者もおらず、検査も診察も事務仕事もなくぽっかりと時間の空いている自分が、こうしてのこのこ捜しに行くはめになる。
 そこで見つけるのがぬくぬくと毛布に包まって眠っている艦長───というよりアカデミー時代からかわらない年下の友人の、悪童めいた笑みだったりすると、貴重な時間を返せ。俺は保護者でも飼い主でもなくただの医者だ!と大声で喚いたところで誰も文句は言うまい。
 実際は適当に毛布を畳んで立ち上がった艦長と自分しかいないので言わないが。

「その時は俺がさがしにいくだけだよボーンズ」

 飯でも食いに行こうか?どうせそのくらいの時間はあるんだろう?

 いつのまにか。
 そう、いつも、気がつけば先にいる男が、振り返って笑う。
 立ち止まり、青い瞳を悪戯っぽく瞬かせ。

「───言っておくが飯食ったら副長の説教タイムだからな」
「は!?」

 冗談だろ!?
 と、大げさに喚く年下の頭を軽く叩いて前に出る。
 
「痛い!」
「なら医務室いくか?そういえば最近検診も───」
「い、痛くない……」

 小さくもない身体を精一杯縮めて隣りに並んだ男が、甘えられる時間も相手も今は限られている。
 だからというわけではないが。

「……まあ俺だけじゃないしな」
「ボーンズ?」


2009.12.28
黙って消えるくせに見つけてほしいわんこと、それをわかって捜しに行くボーンズ以下エンタープライズメンバー。
今回はドクターでしたが時間があったら他の面子も捜しにいきますよー。
甘いから( ´ ▽` )
甘えっ子に甘いから!!


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