鳴ライお試し版
触れた肌は暖かかった。
「───ッ」
その下の血の色さえ伺えない白い皮膚に指をのばしたのはただの気まぐれだった。
夕暮れ。
あるいは、逢魔が時。
「平気、なわけないか……」
腕の下で喘ぐ身体が痛みに耐えるように震えて、けれど濡れた視線が刃のように突き刺さる。
凛とした佇まいと整った容貌と落ち着いた物腰。
けれどその見た目ほど───あるいは本人が思っているほど。
(これで今かわいいとか言ったら殴られるかな)
触れた肌は暖かかった。
赤く濡れた唇も異形を屠る手も白い身体もその中も。
苦痛を堪えるように噛み締められた唇にそっと口付け握り込まれた手に指を絡めうっすらと色をのせる肌を辿り求められるまま穿つ。
触れた肌は暖かかった。
だから離せなくなった。
堪えきれず溢れた吐息は甘かった。
だから止められなくなった。
黒く濡れた目が熱を孕んで瞬く。
ひとつひとつ。
確かめるように暴いた身体が震えて軋んで絡みついて。
「……ライドウ?」
その名を。
意味を。
「と言うか、なんでこんなことになってんだろう?」
気負うでもなくただ告げた子供が聞けばさすがに恨み言の一つでも零したであろうが。
閉じられた瞼に口付け、存外、幼い寝顔に口元が緩む。
使命を使命と思わない、否、こちらの世界にただいるだけの人の子に、一度だけ、告げられたその名を声に出さず呟いて。
「……りっちゃんって呼んだら殺されるかな?」
触れた肌は暖かかった。
だから逃がせなくなった。
2006.04.03
このあと黒猫様に引っ掻かれるわけですよ(blog02参照)
【clap】
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