「……」
ゆるゆると開かれた視界に黒い制服が見える。
「甲太郎」
「……なにしてんだ」
「風避け」
「……」
気持ち良さそうに眠ってたから。
と、笑う男の手がすっと伸びてきて皆守の髪に触れる。
「もしかして、まだ寝ぼけてる?」
「……」
横になっていた身体を起こしたまま、いつもなら触れる前に避ける手をそのままに、大人しい皆守の顔を覗き込むように男が顔を近づけてくる。
髪も目も真っ黒なその色が。
「甲太郎?」
「……黙ってろ枕」
「……」
言われた通り、口をつぐんだ、自分より一回りは大きい身体に寄りかかって、皆守は目を瞑る。
噎せ返るような花の匂いは今はしない。
そのかわり───。
「……ああくそ」
小さく、ついという感じで漏れたその声に。
「何笑ってんの……」
「別に」
「お前、俺のことなんだと思ってんの」
「……26のくせに図々しくも高校生のフリして潜入してきた胡散臭い墓荒らし」
「……せめてトレジャーハンターって言ってくれないかな」
「いいから枕は喋るな」
あああああもう。
と、ぼやく気配が頭の上でして、眼を閉じたまま、皆守が小さく笑う。
花の香りは今はない。
けれど。
「……覚悟しとけよ」
と、物騒な、それでいてどこか優しい声が耳朶に落ちて。
ふっと微睡んだ意識がとけるように霧散する。
だから。
こめかみに触れた小さな熱がそのまま目蓋に移ってもそのままにしておいた。
2006.09.27
26歳@アロマを口説く気満々(というか口説いてる)葉佩さんとそれを知りつついまのところ放っておいてる皆守君@18歳。
てか出来上がってないんだけどこの二人。
【clap】
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