Let sleeping dogs lie.


「ただいま」

 と眠るその人に小さく声をかける。
 卒業後、すぐにでも連れていきたかった人はけれど、このままでは足手まといになるから。と生来の生真面目さを発揮して、今は協会の日本支部で《宝探し屋》やバディの為の基礎知識を得る為の講習を受ける毎日だ。
 知識は勿論、武器弾薬の扱い方。それを日本で習得できることに最初、呆れたような貌をしていたが、成績は優秀だ。これならそう遠くない将来、一緒に探索にいけそうだ。と一週間振りの再会に自然と頬が緩む。

「甲太郎……」
「……ん、」

 耳朶に吹き込むように名を呼べば、小さく身じろいで吐息を漏らす。

「……くろう?」
「ただいま」
「───ッ、おい!」
「あーいい匂い……」

 待て。と、ベッドの中に潜り込んできただけでは飽き足らず、服の中にまで手を滑り込ませてきた葉佩に、皆守の眠気が吹っ飛ぶ。

「ば、お・前、何やってッ───」
「充填」

 首筋を吸われ肌を這う指の動きに身体が跳ねる。
 いつもなら蹴りの一つでも出るのだが、さすがに寝起きを襲われてはどうにもならない。
 それを知りながら───後でそれなりの報復があることを覚悟しながらも葉佩の手は止まらない。
 服の下の線を辿りゆっくりと、だが確実に追い上げる。ひとつひとつ、確かめるように動く指が熱に絡んで、宥めるように唇が額に落ち目蓋に触れ溢れた吐息を吸い上げる。
 声にならない声を余すことなく拾い上げ、手の中の熱を追い上げる。
 火のついた身体はあっさりと灼け堕ち───。

「……て、め……」
「俺にもちょうだい」

 荒い息の下の、燻る熱を隠す余裕もなく皆守が睨みつけるのを、いっそ朗らかといってもいいような笑顔で受け止めて、罪悪感の欠片もない声で葉佩がその獰猛な本能のまま、痩せた身体に牙を剥いた。


犬の言い分 猫の言い訳

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