『嗚呼畜生』
蹴っても殴っても罵っても全然これっぽっちを言動を改めない葉佩に俺の決して短くはないが長くもない忍耐はあっさりと切れた。
結局躾の失敗した駄犬(しかも大型)だと思えば吠えられようが飛びつかれようがさほど気にならない───というな慣らされた。
だから、
「こーちゃん」
「あ?」
耳のすぐ近くで高くもない声が甘えた響きで放たれる。
それも慣れた。
「ひまー」
「そうかよ」
俺の後ろから腕が伸びてきて腰の当たりにまわされる。
それも慣れた。
「……いいことしよ」
「ひとりで遊べ」
首の後ろに押しつけられた葉佩の髪も背中に当たる壁じゃないやわらかい感触と暖かさにも慣れた。
慣らされた。
下手に反抗するより好きにさせていた方が楽だった。
だから、
じゃあそうする。と楽しそうな声が耳朶に吹き込まれ、腰にまわされた腕が服の中に入り込んできた時に、一瞬、何がおこったのかわからなかった。
そしてそれが致命的な隙になって逃げる機会を逸してこいつが犬じゃなくて俺と同じただの───。
「───ッ!お、前・なに、して……ッ!!」
「あそんでまーす」
ひとりで。
「!!」
情欲を滲ませた声と熱を含んだ息と躊躇いもなく潜り込んできた指に、呼吸が止まる。
「こーちゃんもあそびたくなったら言ってね」
───嗚呼畜生。
2006.04.01
アロマを表す四字熟語は『自業自得』
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