「……」
シングルベッドとは文字通り、1人用の寝台だ。限定一人だ。一人分しかスペースがないのだ。
それを。
「……おい」
「んー」
「寝たふりなんぞするな」
「こーちゃん好きー……」
「そんなことはどうでもいい」
「どうでもよくないっ!」
「……やっぱり起きてやがったな」
「う」
夜中に何か苦しくなって目が覚めれば、自分に抱きついて眠っている自称“親友”。
というか。
「そもそも鍵閉まってただろうが」
「それはもちろん愛の力で」
「……」
「ごめんなさい俺の優秀な《宝探し屋》としての溢れんばかりの才能が……」
「枯渇してしまえ」
「ううぅ……」
いい年した男の泣き真似なんぞにこれっぽっちも心は動かないが。
「いい加減退け」
「ヤダ」
「お前な、」
「嫌だ。やだ。こーちゃんと一緒がいいー」
「……どこの幼稚園児だ」
「ママ一緒に寝よー」
「誰がお前の母親だ!」
ツッコミどころが激しく違うというか、すでに脱線しまくっているのだが、相変わらず九龍は皆守に抱きついたまま離れない。どころかますます身体をくっつけてくる。
「狭い」
「だいじょーぶ。俺、寝相いいから」
「そういう問題じゃあない」
「だいじょーぶ。何もしないから」
「出てけ」
「ちなみに俺はいつでも準備万端何されてもオッケーですから!」
「何の話だ!というか聞け人の話をっ!っておい、九龍!?」
(寝やがったッ───)
狭いベッドの中で、時間が時間ということもあり、なるべく小声でしかも音を立てないようにと、夜中に他人の部屋の鍵を非合法な手段で開け侵入し、ベッドにまで潜り込んできた非常識な相手に常識的な対応をとっていた自分が悪かったのか。それはそれで何か腹が立つが結局、不法侵入者は《宝探し屋》という胡散臭い職種の片鱗すら見せず、あっさりと夢の中に旅立った。
(いいのかお前、そんなに隙だらけで……)
自分を湯たんぽか抱き枕と勘違いしてるんじゃないかと思うほど、寝顔は無防備で平和だ。
(……くそ)
そんな穏やかな寝顔を見せられて、蹴り落とせるくらいならそもそも最初から部屋に入れたりはしない。
どんなに深く眠っていても、自分のテリトリーに異物が紛れ込めばすぐわかる。
それなのに。
(冗談じゃない)
本当に。
冗談じゃない。
ラベンダー以外の香りと誰かの体温に───。
2006.05.28
『嗚呼畜生』の前です。なのでアロマさんはくろーさんのことをこれっぽっちもどーとも思ってません。でっかい犬が潜り込んできやがったくらいの認識で。
【わんこは181cm】
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