「……何やってんですか、あんたら」
「見りゃわかるだろ」
「爪のお手入れだよ」 
「……」

 風呂上がりに談話室に寄ったのがまずかったのが。
 どうりで誰もいないはず。と目の前でソファに偉そうに座っている天パの男と、その足元で何やら───見間違い出なければ───座っている男の片足をとって爪にヤスリをかけている黒髪の男を見て、何故、自分はこんな所にいるんだろうかと後悔しつつも、疑問を疑問のままにしておけない自分がいて。

「つーかそんなこと、部屋でやってくださいよ」
「いや俺もそっちの方が何かと都合がいいんだけどさー……」

 と床に座り込んでいる男が苦笑する。

「こーちゃんが大画面で観たいって言うから」
「……」

 何が楽しくてというかカレーなんかどれで見ても同じだろう。と口に出せたら、誰かもわからない人間の補佐などやっていない。唯々諾々と金魚の世話等しない。

「まあ大人しくしてくれる分、俺は色々やりやすいんだけどね」
「いつもやってんですか、あんた」
「うんだって俺にも関ることだしね」
「……」

 何が。とか、何を。とか、単純な疑問が思い浮かんだが、本能が訊くことを回避したので結局、沈黙だけが落ちる。

「はいおしまい」
「ん」
「……」
「……」
「……」
「……もう少しだから」
「……うん」
「……眠いんなら先行ってろ」
「こーたろーと一緒がいい」

(……)

 真剣に、普段の気だるさが嘘のような真面目な貌で大画面を食い入るように見詰める天パの男の、投げ出された手に指を絡めて、黒髪の男が嬉しそうにひっそりと微笑む。
 という光景を間近で見てしまい、もう二度と、金輪際、この二人には近寄らない。と心に誓ったのだが。

「おーい、ポチー!今日つき合えー!」

 花の香りを纏う男とその隣りで笑う黒髪の《宝探し屋》の呪縛からは当分逃れられそうにはなかった。



2006.09.27
『爪切り』ネタは密かにあっためてたんですが。
アロマはもう色々慣らされちゃって自覚してないです。

【ごめん補佐(爽)】

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