ワルツ・フォー・ビースト
簡単に言うと葉佩九龍は怒っていた。
もの凄く。
これ以上もなく。
どきっぱりと。
理由は皆守甲太郎。
年下の可愛い恋人兼相棒だ。
可愛くて強くてツッコミが激しいがそれでも九龍にとっては最愛の人だ。
それを。
(あんの腐れ外道共)
例によって例のごとく遺跡でレリックなんちゃらという厚苦しい団体と済し崩しで戦闘になりいつものように蹴散らしていた時にそれは起こった。
飛び交う銃弾の中も平然とアロマを吸ってうとうとできる皆守が不意に動きを止めた。
避けられるはずの攻撃を避けなかった。
つまり九龍を庇った。
結果、怪我をした。
二の腕を掠めた熱にも痛みにもわずかに眉を寄せるだけで何も言わなかった皆守の顔を見て血の滲む腕を見てその後ろに銃口を見た瞬間から記憶がない。
そして気がつけば皆守に───怪我をしたほうの腕で殴られて阿呆だの馬鹿だの散々言われそんなことより怪我そんなことってなんだいやだから怪我してるし擦り傷だいや俺が嫌なんだというかみ合っているようでかみ合ってない会話をしながら地上に出てホテルに戻り怪我の手当をして痛み止めに色々混ぜて飲ませてベッド放り込んで。
(俺のこーたろーに怪我なんかさせやがって!)
今頃薬が効いてぐっすり眠っているはずの皆守の幾分憔悴した顔を思い出して唸る。途端に頭のどこかがざわついて、
(あーわかった……わかってるよ、───“俺たちの甲太郎”だ)
胸中で呟けばその通りだと頭のどこかが頷く。
ことこの年下(あるいは年上)の恋人(親友相棒情人兄他色々)のことに関して意見が揃うことはあまりないが───それでも各々の感情は抜きにしてプロとしての矜持と皆守を大切だと想うことだけは一致しているので。
(その甲太郎を傷つけた奴らは)
殺す。同上。許さない。同じく。絶対。うん。当然。勿論。
(その通り)
コートの下に忍ばせたそれぞれの得物を無意識に握りしめ、くつりと笑う。
目の前にそびえるビルを一度見上げ、ゆっくりと足を踏み出す。
「こんばんは」
カツン。と軽い音をたて磨き抜かれた床に落ちたそれの正体を察した数人ががさっと顔色を変えごく普通の会社員の顔をはぎ取る前に───。
「そして───さようなら」
蹴り飛ばした手榴弾が爆発した。
2006.05.07
最後のあれはビバップラスト(爆)
【See You...】
・top
・novel
・home