貴方とワルツを


「……」

 目が覚めたら朝ではなく昼だった。
 いつものことといえばいつものことだが。

「おはよー気分どう?」

 まだどこかはっきりしない意識のまま、ひょいと現れた顔を見る。
 
「……よくない」
「まだちょっと熱っぽいね」

 起きられそう?
 と心配そうにこちらを覗き込む顔はいつも通りで。

「……お前」
「なに?」

 それが逆に。

「なんでもない」

 そう?そーだお腹減ってない?さすがにカレーじゃないけどここはカレー以外もおいしいから一緒に食べよ。

 と笑うこいつの貌を見たらなにかもうどうでもよくなって。
 腕に巻かれた包帯に無意識に触れる。
 昨晩は確かにあった痛みも熱っぽさもすでにない。
 おそらく傷の痕跡すら。
 
 それなのに。

『───昨晩、爆発炎上し半壊したP.I.Bビルですが……』 
「……わーテロだってーこわいねー」

 やっぱり悪いことはできないよねーとのほほんと微笑う恋人兼相棒ところによりテロリストの声を聞きながら。

「どしたの、こーたろー?」
「いや」

 その、何もかも吹き飛ばし或いは押し潰しかねない情を、もはや当たり前のように受け止める俺も同じなのだろうと思った。



2006.05.09
『ワルツフォービースト』後日談。でもって上記タイトルを意訳すると『毒喰わばテーブルまで』(え)

【でも音楽−5】

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