《狂犬》


 その男は闘う為に生まれた───。

「皆守」

 目の前の見慣れた顔が、見慣れない笑みを浮かべ呼ぶ。
 聞き慣れたはずのその声は、いつもより低くどこか掠れていて。

「……」

 無言で睨めば、くつりと、深くなる笑みに目暈がする。
 誰もいない墓の下。
 異形は光りとともに消え、残ったのは殺戮の興奮の残滓を持て余している一人の男。
 左手に刃。
 右手に銃。

「皆守」

 熱を孕んだ呼気が耳朶に落とされる。
 知らずに後退した足が壁にぶち辺り、男の右手が髪を嬲る。
 赤い舌が近づいてきて目を瞑れば、そのまま瞼を舐められ。
 粗野な言動には不釣り合いな、きれいな歯がいたずらに顎を掠め。

「───皆守」

 軽い音を立てて刃が落ちる。

「……皆守」

 重い音を立てて銃が落ちる。

「───ッ」

 喉を伝う舌を肌を辿る掌を下肢に絡む指先を。
 武器を持って奪い殺すことを躊躇わない男の手を皆守は───。

「いこうぜ」

 離すことが出来ない。



2006.08.29
うけくろーさんの中の人シリーズその1。
一(はじめ)24《狂犬》
破壊魔人。困った人。闘うことに関してはオールマイティー。
本能で生きる人なのでアロマいい迷惑。
思考はシンプル。細かいことはすぐ忘れる。

【clap】

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