《鴉》
「おい、九龍お前───」
鍵のかかっていない隣室の扉を開けるとそこにいたのは───。
「ごちそうさま」
「……“誰”だ?」
立ったままカレーを食べていた男が振り返る。
黒い髪に黒い瞳。
見慣れたその貌はしかし。
「えーあーどうしたの甲ちゃん?」
「似あわねぇからやめろ気色悪い」
「……酷いな、おにーさんだって傷つくんだけど」
と、溜息をついて肩をすくめた男が、小さく笑う。
普段の突き抜けた言動さえなければ確かに顔のつくりはいいのだな。とお団子頭の同級生から聞いた(というか聞かされた)女子達の評判を思い出す。
「はじめまして。というか、驚かないんだねぇ……」
「お前で2人目だからな」
「ああ、なるほど……でも“前”みたいに襲われるとか考えないの?」
「───ッ」
ほんの僅かだが肩を震わせた皆守に、男は笑顔で近づいてくる。
反射的に下がった背中がドアに当たって───。
〈皆守〉
「───思い出した?」
「ふざけんなっ!」
顔の脇に置かれた両手を振り払って抜け出した皆守が、顔を真っ赤にして怒鳴れば。
「ごめんごめん悪かったって……」
踞って腹を抱えて笑う男が一人。
「ああもう可愛いなぁ……九龍や一がちょっかい出す気持ちがすんごいよくわかるんだけど……」
笑い過ぎで涙目になりながら、ようやく男が立ち上がる。
同じ顔同じ声同じ身体のはずなのに雰囲気がまるで違う。
こうしていればあの男も存外まともなのではないかと思いつつ、けれどやはりどこか物足りないような気がして。
「それで、何の用なの?」
「もういい」
レトルトカレーのストックがまたなくなったから犯人を捕まえにきた。
はずなのだが、証拠は目の前で隠滅され(ある意味決定的な証拠だったが)本人は悪びれることもなく目の前にいる。
九龍ならともなくこの男に責任の所在を追求したところで躱されるのがオチだ。と、たった数分のやり取りで悟った皆守は、これ以上関る気にはなれず、踵を返しドアに手をかけ───。
「あ、そうそう」
たところで腕を掴まれ身体を引かれる。
「!」
何を。
と、噛みつきかけたところで頬を掠めた黒い影に意識を取られ次の瞬間。
「〜〜〜!!」
「───……カレーのお礼」
美味しかったよ。
カレーもお前も。
と、離れた唇がにやりと笑った。
2006.09.01
うけくろーさんの中の人シリーズその2。
二龍(じろー)23 《鴉》
はじめさん他のフォローをする人。次男だけど長男っぽい感じで。
戦闘よりは司令塔。しかし弱いわけではないので。闇討ちとかきっと得意だ。
アロマに対しては「お兄さん」ぶるけど所詮セクハラ棚からぼた餅鳶で油揚げをかっさらう人。
【clap】
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