《火蜥蜴》と《王子》


「なー《王子》は突っ込むの?突っ込まれんの?」
「───ッ」

 ぐほ。だか、げほ。だかくぐもった音がして目の前の男が咳き込む。
 吹き出さなかったのはそれが青年が愛してやまないカレーだったからで。

「お、ま、な、」
「いやさー九龍も《王子》もどっちもネコじゃん?」

 きちんと飲み込むまで待ってやろうと思っているのに、目の前の男は存外、気が短いらしく、というか老成して見えてもまだ(かろうじて)十代。というところなのか。
 純粋な苦しさにかそれとも照れなのか顔を真っ赤にして抗議する青年の背中を叩きつつ、のほほんと問う。

「あ、あのな……」
「九龍はともかく、他の奴らはどーなのよ?」
「……」

 ぎろり。と擬音がつきそうな凄まじい視線が突き刺さって来たが、耳まで真っ赤にしていてはその効果も半減だ。

「あーそーうん、わりぃ」
「一人で勝手に納得するな!」
「いやいやいやつーか《王子》が無駄に色気垂れ流してるからこりゃ他の誰かについうっかり喰われてんのかなーと思ったんだけどまーそういう事情なら仕方ねーよな」
「だ・か・ら!人を《王子》と呼ぶな!」
「じゃあ《女王》様?」

 ほんとお前等。
 最近、無駄にエロいから控えてよ。

 と、とびっきりの笑顔で手を振れば。

「くそっ!苦情ならあいつに言え!!」

《王子》こと皆守甲太郎───《騎士》の末席に連なる《陽炎》は足音も高らかに───それでもカレーはしっかり食べ終わってから───部屋を出ていく。

「ちょっと聞いたー?苦情だってさー!」
「……あまり年下をからかうんじゃない」
「いいんだよ、どうせ行くのは九龍のところなんだからさー」

 喧嘩したんだってあいつら。
 どうせすぐ仲直りするくせに。

 と、人の悪い笑みを浮かべながら嘯く《火蜥蜴》の後ろで《白狼》が溜息をついたが、それ以上は何も言わなかった。



2006.08.16
《白狼》ヴィンセント・D・ホワイト
お父さん。天然。獣使い。《白狼》×《火蜥蜴》って有りですか?(え)

【clap】

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