《葬儀屋》と《王子》
人間。
あまりにも予想外の事に遭遇すると固まるらしい。
と、己の腹の上で嬉々としてシャツを脱がそうとしている男の顔を見る。
「……何してんだ」
「ああ思った通り色白いね」
「だから何してんだよおっさん」
「若いのに鍛えてるねー。体脂肪率何%?」
「だから何して───」
肌の上を滑る指にようやくここで危機感を覚えたが身体が動かない。
比喩でもなんでもなく、動かないのだ。
もしやこれはまさかあれか。
と、思考すら空回りする皆守の後ろで派手な音がたち、それが扉を開けた男だと気づいた時には、顔の横を銀色の物が通り過ぎ、
「───《葬儀屋》」
「やあ、ななみちゃん」
男───《葬儀屋》の喉元で止まった。
「呼ぶな変態」
「僕のハニー達は元気かな?」
「全員ビビって泣いてやがる」
まったくこれだから男共は。
と、吐き捨てるように呟く声は低く、聞き慣れたものだが。
「可愛い恋人の危機なのに?」
「だから“私”がきたのだ」
「───皆守君、君って実は愛されてないんじゃない?」
「……それとこれとどういう関係があるんだ?」
頭の上で交わされる頭の悪くなるような会話でだいたいの事情は察したのだが。
それなら自分を剥く必要はないはずだ。断じて。
といまだ殺気を纏ったままの背後の気配と、さりげなく腰の辺りを撫でている男に挟まれ、いっそこのまま気でも失ってやろうかと半ば本気で思っていると。
「《狂犬》が乗った躯っていうのに興味が沸いて」
「───ッ!!」
「てめぇっ!!」
胡散臭い笑みに絶句した皆守の背後でぶわりと怒気が立ち昇る。
「やあ、一」
「呼ぶな変態!死ね!」
叫び様刀が閃き銃声が轟く。
「相変わらず可愛いなぁ」
「殺す!」
「……」
あっさりと自分の上から退いた男と、刀と銃を振り回す、姿だけは恋人の後ろ姿を見ていると。
「モテモテね」
一部始終を見ていた《黒薔薇》が呟く。
「……どこがだよ?」
ようやく動くようになった上体を起こして、後ろを振り返る。
廊下の向こう側では相変わらず死ねだの殺すだの物騒な怒号の合間に、銃声と笑声が混じって。
「《葬儀屋》も《魔女》も九龍も───焼き餅を焼いたのよ」
「……そんなかわいいもんかよ」
「可愛いものよ、男も、女も───貴方もね」
2006.08.18
《葬儀屋》オリオン・ファーロック
元暗殺者。異能力者。邪眼。
《黒薔薇》リリィ・ブラッドリンク
外見幼女。一番年上。
気がつけば《黒薔薇》一人勝ち。
《葬儀屋》さんはいっちゃん(一と書いて『はじめ』と読む《狂犬》)がお気に入りなので、そのお気に入りのアロマさんをセクハラしていっちゃんを釣る気でした。というお話。
アロマいい迷惑。
ちなみに《葬儀屋》さんはいっちゃん命なので他の九龍さんズはあまり眼中にないのですが、いっちゃんが、激しく毛嫌いしているので近づかない方が無難かなぁというわけで、対《葬儀屋》の時はななみちゃんが出てくるハメに。
九龍さんは別に平気なんですが。ただ、アロマが絡むと人が変わるのでここはひとつ穏便に。というわけでななみちゃん。あれでも穏便。
とりあえず《葬儀屋》はセクハラする人。だと覚えていただければ(どーなのそれ)
【clap】
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