境界線


 その手から逃れることは出来た。
 しかしそれは“皆守甲太郎”の動きでは無理だ。
 だから掴まれた手首をそのままにして。

「───なんのつもりだ?」
「いや、」

 なんとゆーか。
 と、不意に、まるで“夜遊び”の時のような無駄のない動きで人の腕を掴んだ男はのほほんとした顔で首を傾げる。
 そして。

「細いよねー」
「───ッ」

 制服の下から僅かに覗く、手首の内側に唇を押しあてた。
 ごく自然に。

「………………なんのつもりだ」
「………………男としての義務?」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……そうか」

 その手を振り払うことはできなかった。
 それは“皆守甲太郎”にはできないことだった。
 しかし。

「いっぺん死ね」
「い、や、ちょっ、じょーだんじょーだんだよこーたろー」
「これも冗談だ」
「いやマジです!あなたその目はマジです!!」

 ぎゃーぎゃーと騒ぎ立てるこの男を静かにさせることは“皆守甲太郎”としての許容範囲内だ。
 だから皆守は気だるげな動作で必殺の蹴りを逃げ回る男に叩き込んだ。



2007.04.06
“墓守”と“人”との境界線。
つーかアロマの手首の内側にちゅーする葉佩さんが書きたかっただけです(爆)

【どつき漫才】


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