カウントダウンアニバーサリー


 そろそろ甲太郎の誕生日が来る。
 4月12日。
 忘れもしないその日を前に、俺はいまだに遠く離れた遺跡の中。
 去年も遺跡の中でぶっちゃけそれどころじゃなかったけど、甲太郎が一緒だった。
 甲太郎のアパートに押し掛けてそのまま空港まで持っていってそれから世界を半周くらいはしたと思う。
 最初は日本に帰るとかバイトがとか詐欺だとか言ってたけどそのうち諦めたらしく、本部まで連れていった時にはもう何も言わなくなってた。
 言わなくなってたというかふっきれたというかぶちきれたっていうか。
 眠い怠い面倒くさい無気力無関心だけど本当は意外と真面目で責任感もある真っ当な神経の持ち主の甲太郎がいつの間にかというかわりとあっさりトレジャーハンターなんていうやくざな職業に慣れた。
 本部の連中が俺のバディなんかやめて独立しろっていうくらい優秀だった。
 とはいってもにわか《宝探し屋》にかわりはなく、碑文関係はまるっきり駄目だったから結局、俺のバディというポジションに落ち着いた。というか後から訊いたらそれ以外するつもりはまったくなかったらしく、俺の心配は全くの杞憂だったわけだけど。
 ともあれ去年の今頃は大変だったけど楽しかったなーとひとり、遺跡の中で溜息をつく。
 案の定甲太郎は自分の生まれた日のことなんてすっかりきっぱり忘れてた。
 俺は遺跡のラスボス───倒したと思ったら復活して追い掛けてきてなりふりかまわず逃げてる間でも忘れてなかったんだけど、この状況で「甲太郎愛してる!誕生日おめでとう!」なんて言おうものならラスボスより恐い甲太郎に息の根を止められると思ったからさすがに控えてたんだけど。
 そいつは遺跡から出た瞬間砂になって消えてああ助かったと思った瞬間、抱きついて押し倒してキスしておめでとうって言ったらやっぱり殴られた。
 でもってその場で───二人とも満身創痍だっていうのに───俺は砂の舞う遺跡の前で報告する間もなく2時間説教を喰らってた。しかも正座で。いや正座したのは自主的っていうか条件反射だったんだけど。
 でもそのあと甲太郎が「忘れられない誕生日だ」って笑ってからの記憶が曖昧で気がついたら滞在先のホテルで隣りに甲太郎が寝ていて。
 でもって起きた───でもどっか気だるげな甲太郎にまた説教喰らったんだけど───おぼえてなかったんだよその間。俺。自分が何をしたのか。
 勿体ない。って正直に言ったら真っ赤になった甲太郎に「もう2度と言うか!」って捨て台詞とともに蹴られて危うく《宝探し屋》の死亡を確認されそうになったんだけど。でもってホントに何したんだよ俺。
 なんだろう。うまくいったはずなのに何か釈然としない想いを抱えつつ俺の誕生日は絶対、絶対と思ってたのに案の定───甲太郎は忘れるどころか知ってもいなかった。
 うんまあ期待なんか……期待なんか……し、してたとも!
 あれでどっかに乙女回路を持ってる甲太郎だから、こう、カレーの一つや二つ、準備して、たり?とか、お、思っ───って悪いかよ!
 寝起きというか安眠を妨害されて凶悪さに磨きをかけた甲太郎に文字通り一蹴され鼻で笑われたけど床で泣き崩れたけど元はとったし。今度はおぼえてたし。
 そんな感じでつかず離れず、日本だったりどこぞの遺跡だったりとわりと忙しいなりに充実日々をそれなりに送ってて気がつけば4月。
 甲太郎は日本で料理を腕を磨いてるだろうし(ぼんやりとだけど自分の店を持てたらいいなーみたいなことを言ってたと思う)俺は俺でこんなところで一人、団体さんを相手に小休止をとってる最中で。
 これがただの探索だったら何の問題もなくびばっとやっつけてちゃっちゃと帰るんだけど。
 会いたくないもない人達の相手をするのは正直億劫でいい加減そろそろぶちきれそうなんだけど。
 怪我のひとつでもしたら途端に甲太郎の機嫌が悪くなるので無茶もできないし。
 それに誕生日とかクリスマスとか正月とかそういう日は楽しむもんだ。と教えた方としては帰らないわけにはいかないじゃないか。
 ああ見えて一度暖かさをしるとそれを手放せないのが甲太郎だ。
 ひとりでいいなんて精一杯の虚勢をもう張らなくていいんだと、寂しい時は寂しいって言えるようになった甲太郎をひとりになんかできるわけない。
 というか俺が耐えられない。
 やっぱりさくっと帰って精一杯心を込めて誠心誠意愛し倒そうと心に誓って、立ち上がる。
 この扉の向こうにいるのは最後の《墓守》でここを出る瞬間から相手にしなけりゃならないのは例の夜明けの団体さんだけど。
 俺と甲太郎の未来を邪魔する奴は神だろうが悪魔だろうが叩きのめす。

(待ってろよ甲太郎!今年こそ忘れられないっていうか俺の記憶が飛ばない誕生日にしてやる!)



2006.04.08
アロ誕前葉佩さん独り言Ver.

【clap】


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