いっぱいいっぱい


「聞いてくれ甲太郎!」
「……」

 ゆっさゆっさと揺らされている皆守は半分以上寝ぼけているのでツッコミという名の制裁をいれることもなくなすがままだ。
 
「甲太郎がいっぱいいるんだ!」
「……そりゃよかったな」

 何がいいのかまったくわからないがとりあえず口が勝手に動く。
 というか寝かせてくれ。正直。というのが偽らざる本音だが、眠すぎて何もかもどうでもいい。

「よくない!よくないよ!」
「……なんでだよ」
「そもそもお前が魂の井戸なんかに落ちるから!」
「……」

 誰が落ちるんだ。お前と一緒に遺跡に潜るようになった今でもそんな得体の知れないものには近づいてない。

「何か聖母だか聖女だか女神だかわかんなけど女の人が出てきて『貴方の落とした彼はどの彼かしら?』なんて……」

 猫耳とかスーツとか白衣とか神父とかエプロンとか眼鏡とかお姫様とか!
 てゆーか俺より年上のお前ってなんか犯罪くさかった!魔性?雌豹??
 なんか覚醒しちゃってる感じで!めたくそエロくさかった!
 なのにその隣りには違うタイプの、男の色気ってゆーの?を惜しげもなく曝け出しちゃってくれてるお前がいて俺どうしたらいいのかわかんなくて!

「……」

 どうもこうもそんなのはこっちが聞きたい。否、聞きたくない。
 なんだお姫様って。正気か?というか勝手に犯罪だの魔性だのエロだのお前は日頃俺をどう思ってるんだ。
 と、声に出すのも面倒なので皆守はただ黙って揺さぶられるままだ。
 なのでそのまま腕の中にすっぽり抱き込まれても大人しい。

「でもさーあんなにたくさんいたのにお前がいないんだーだから俺……」

 どーしたらいいのかわかんなくてそりゃあんなにたくさん甲太郎がいたら嬉しいけどでもやっぱりお前がいないから正直に「いない」って言ったらたくさんいた甲太郎も全部消えて井戸も消えてでもやっぱりお前がいなくて困って悲しくなってそこで目ぇ覚めてお前がいて。
 
「俺やっぱりお前が一番いい」

 起こしてごめんな。ってもう寝ちゃってる?てゆーかやっぱり聞いてない??まあいっか、おやすみ、甲太郎。



2006.04.18
スーツと白衣の人は同じアロマさんなんですが(奴だ)

【clap】


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