くろねこのさんかく03


「ただいまー……って、寝てんのかよ」

 狭いアパートだから、部屋の片隅に置かれたベッドもすぐ目に入る。
 だからその上で丸くなって眠っている黒猫の尻尾も見える。

 そう。

 あの日は、結局、遅い朝食だか昼食だかを食べている時に、これまた腹を空かせてやってきた京一さんが「あ。猫」とあっさりとバラしてくれて終ったけど。(ついでに俺の人生も終りかけた)

「こーたろー……」
「……ん」

 猫耳も尻尾も大事だったけどそれ以上に気を使ったのは生地だった。
 甲太郎が身につける物にはたとえそれが単なる俺の趣味でも妥協なんかしたくなかったし。
 世界でたった一つのオーダーメイド(そういえば俺、甲太郎のサイズ言ってなかったんだけどちょうどよかったなー)で、たとえ一夜限りのものだったとしても。
 俺も楽しくて甲太郎もそれなりに楽しかったらそれが一番いいなぁと思ってたから。

「ただいま」
「……おかえり」

 さすがにもうフードは被ってないけど(あれは甲太郎が眠ってる間に俺が被せたからできただけで)、黒猫の上下を本人曰く「どうせ誰も見てない」と、見た目より着心地が勝ったらしく。

 ほとんど無意識に呟かれた声音にひかれるようにそっと口付けると、腕の下の黒猫はどこか嬉しそうに笑った。


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2006.02.22
つい出来心で。

【clap】


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