「おかえり」
そう言ったのはいつもなら今頃《探索》の真っ最中なはずの男で。
「……なにやってんだよ」
「それはこっちの台詞」
「……」
深夜。
さすがに他の奴らも部屋で大人しくしているそんな時間に、人の部屋の前で何をやっているんだ。という台詞は、素っ気ない、けれど何かを匂わせるニュアンスで放たれた声音にのみ込まれる。
「お前が寂しがってると思って早めに切り上げてみれば部屋にも風呂にもいないし」
「……」
「───どこ行ってきたの?」
「……寝つけなくて外出てただけだ」
「俺の誘いは断ったのに?」
「───俺がどこで何をしようとお前には関係ないだろう」
「一応、お友達の心配くらいはするんだよ俺も」
「……」
まあ。帰ってきたから俺は行くよ。
そう言いながら、近づいてくる男の腕を俺は振り払わなかった。
暖まったはずの体の熱が急激に冷えていく。
「───いい匂い」
肩の辺りで笑う気配がさざめいて、離れる。
真っ直ぐ、俺を見つめる双眸は相変わらず真っ黒で。
「花の匂いのしないお前もたまにはいいね」
おやすみ。
いい夢を。
最後に触れた九狼の唇は冷たかった。
2006.01.20
何気に阿門邸帰りのアロマ(爆)
【clap】
・top
・novel
・home