大人葉佩さん散文その1カミングアウト篇。
「にじゅうはち……」
授業サボり放題の屋上の支配者は、赤点ぎりぎりの成績を辛うじて維持しているとはいえ、頭は悪くない。むしろいい方だと葉佩はここ数週間の付き合いで知っている。
その皆守が。
いつもなら気だるげな雰囲気で覆い隠している感情をあっさりと吐露させ、どこか幼い口調で呟き、唖然としたままこちらを見ている様に───さすがにいたたまれない気分になって乾いた笑いが漏れる。
「……お前、大和より上だったのか」
「───それは喜んだ方がいいのか悲しんだ方がいいのか」
「いい年した大人が何高校生なんかやってんだよ」
「それはやむにやまれぬ深い事情が」
「28ってことはあのヘボ探偵と同い年か」
「……」
すみません。
天国にいるお父さんお母さん。
俺はもう立ち直れません。
よよよ。と泣き崩れることはさすがにしなかったが、それに近い心境で、葉佩はどこか困ったような笑顔のまま固まる。
いくらなんでも高校生はないだろう。
と、訴えた過去が懐かしい。むしろ遡りたい。もっとしっかり主張しておけば、似合いもしない詰め襟で数年前の記憶を頼りに(そのわりにすでに置いていかれているのだが)遺跡に潜って化人との戦闘より遥かに疲れる高校生活などは送らなくて済んだ筈だ。───たぶん。
「大人っぽいねー」はまだいい。(たとえほんのちょっぴり疑惑の目であっても)
「お兄さんみたい」もまだいい。(野郎の厚苦しい目でアニキ等とは死んでも呼ばれたくはないが)
28はおっさんじゃねぇ。男は三十からだ。とついうっかり地で呟いた相手が───この、10代にしては達観しているがそれでも正真正銘の18歳(何かもう懐かしい響きだ)の皆守だったわけだが。
しまった。と思ったところでもう遅い。
せめて八千穂じゃなかっただけでもまだマシか。と思ってしまったあたりに、ずいぶんと、ここに来る前の自分からは考えられないような開き直りを感じないわけではなかったが。
「カレーパン」
「……」
「マミーズでカレー」
「……」
「───を3日分」
「……」
「い、一週間で勘弁してもらえると嬉しいんですが」
「まあ、妥当だな」
「……」
買収を装った予定調和はそこそこ高くついたような気がしないでもないのだが。
どうせその資金を調達する為にするクエストには皆守自身が同行することになるのだ。
今晩当たり、きっちり一週間分の食事代でクエストを受けて早速連れ出してみようかと考える。
最初に気づくか途中で気づくか最後に気づくか。
たとえいつ気づいたとしても、おそらく皆守は嫌みの一つや二つ、あるいは蹴りの一つや二つはあるだろうが、最後までつき合ってくれるのだ。
そう予想できるほど、あるいは、正体がバレても歳がバレても大丈夫だろう。と思うくらい、自分は、この年下の同級生を信用している。
おそらくそれは、いいことではないのだろうが。
それでも、この状況を、悪くないと思っている自分がいる。
たとえこの先、何がおころうとも。
きっと自分は───。
「そういうわけでよろしく」
「よろしくされてやる」
2005.12.23
まさか自分がこの子供にハマることになるとは露程も思ってません(笑)
それがどんどん煮詰まって切羽詰まっていくのが191@葉佩Ver.の主皆です(微笑)
【clap】
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