「───九龍ッ!」

 襲撃はいつも唐突でだからこそ葉佩に躊躇いはない。
 その大きな体を盾にするように───皆守を守るように背中に庇い、同時に目の前の敵を殲滅するべく武器を構え、撃つ。
 時間にして僅か。
 フルアーマーも《CLAW》の前にはほとんど意味をなさない。
 そして皆守も。

 遺跡の中を徘徊する化け物の類いならともかく、対人となると葉佩は皆守を闘わせない。

「……怪我は?」
「……」
 
 すべての音が消えラベンダーと乾いた土の匂い以外のものが立ち上る中、低い声と、いつもと同じ、少しだけ躊躇うようにのばされた手が、皆守の髪に触れるか触れないかのところで止まる。

 人を殺すことを躊躇わない男が、人に触れることに躊躇う。
 それが何に起因するものなのか、皆守はすでに知っている。
 そして。

「あるわけないだろう」
「そうか……」
「お前は?」
「───ッ」

 触れられることを───。

「───ねぇな」
「あ、ああ……」
「んじゃさっさと行こうぜ。……眠い」
「……はは、いいぞ、寝てても」
「───阿呆か」
「ちょ、」

 掴まえた手をそのままに蹴る振りをすれば慌てたように葉佩が逃げる。
 けれどその腕が振り払われることはなく。
 だから。
 だから。

(いい加減気づけ馬鹿)

 たとえその手が血塗れであろうとも。

(今さら誰が放すかってんだ)



2006.04.08

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