副会長ネタsss


 何もかも終わってめでたしめでたし。
 と、すぐにはならないのが現実というやつで。
 退去命令がこないことをいいことにいまだにこの学園生活を満喫している俺だがさすがにこうなにもないと手持ち無沙汰にもなるというもの。
 遺跡は崩壊。秘宝も横取り。宝を探せない《宝探し屋》はただの備品窃盗常習犯なので大人しくしているのだがいい加減飽きた。
 ので。

「こーたろーっていうか何このラベンダー!!」

 ひょっこり生徒会室に寄ったのは陣中見舞いを建前にそろそろお茶でもというのも建前で単純に好きな人といちゃつきたかっただけなんだけど。
 十代のわかぞーどもが使うには立派すぎる部屋の扉を開ければというか開ける前から漂っていた花の香りに嫌な予感はしてたんだけど。
 煙草じゃないだけマシかーと思いつつも、相当煮詰まってるらしい生徒会役員の一人がデスクの向こうでいつにもまして眉間に皺を刻みつつ、アロマパイプを片手に挟みつつ、もう一方の手を癖のある髪の毛の中につっこみながらこちらも見ずに言い放つ。

「ちょうどいいところに来たな」
「わーなに?甲太郎も俺に会いたかったの?」
「こいつを3-Dの伊藤に届けてくれ」
「ナイススルー」
「急ぎなんだ行ってこい」
「……へーい」

 眠い怠い面倒くさいが口癖のカレーレンジャーが実は正体不明の副会長だったという事実を口に出されたのはほんの数日前。
 そして表の生徒会役員としては名ばかりの副会長がそれなりに有能だという事実を目の当たりにしたのもつい先日。
 普段なら年代ものの机に陣取っているのは生徒会長なのだがその生徒会長が学園外との交渉や地下のあれの後始末やらに集中できるようにとカレー以外のことで自ら率先して動き出した甲太郎に副会長補佐が地味に恐慌状態に陥っていたことすらなにか懐かしい。
 あんなことがあったわりに学園自体はわりと平静を保っているのは、墓の下から出てきたミイラもどきの大半が意識を取り戻した途端、まるで最初からいなかったかのように次々と姿を消したのもあるとは思うけど。
 処罰の対象のほとんどが脛に傷を持つというか大っぴらにできない事情を孕んでいて公的機関につっこまれる前にとんずらする気持ちはよくわかる。
 表向きは立ち入り禁止にしていた地下遺跡が突然崩壊した。ということで落ち着きそうなんだけどまああとは大人の事情だ。
 そして學園の大人達がまるで役に立たない(例外は勿論いるが)ので、やはりまだ生徒会は必要なんだろうと思っているともう目の前は3-Dだ。
 俺も甲太郎もすでに授業ナニソレ状態だけど、運良く昼休み。というわけでドアのところにたって大声で伊藤某を呼ぶ。友達の友達は皆友達。というわけでもないけどまー顔は知ってる伊藤君に預かってた書類を渡してさー甲太郎とラブるぞーと思ったら。

「副会長復帰したの?」
「へ?」

 なにをおっしゃいますやら。っていうか俺、生徒会からとは言ったけど副会長から等とはひとっことも言ってませんけどー。と一人無駄にパニくってると、あっさりと伊藤君が。

「この字、副会長だろ?」
「そ、そーなの?」
 
 そーいえばあいつ、パソ使ってないじゃん。というのを思い出し、でも名前書いてないでしょーと思えば、

「……なんだよお前、あんなにひっついててわかんねーの?」
「ええっと、」

 副会長と知っててひっついてたおぼえはこれっぽっちもないんだけどっていうかまさかこれって、

「つーか副が皆守っていうのはもう解禁なのか?」
「は?」

 バレちゃってますよ甲太郎さん!っていうか何これどういうことーー。

「……これ、この匂い、いっつも皆守がしてるやつじゃん」
「……」

 わーもーどーするんだよ天香のシャーロックホームズ(懐かしいなぁ)

「……俺も訊いていい?あいつが副会長っていうのはわりとみんな知ってることなの?」

 だとしたら最後の方まで気づかなかった俺って間抜けすぎねーと思いつつ伊藤君を見れば、

「知ってるっていうか……気づいてるやつは気づいてるんじゃねーの?わりと前からちょくちょくこの字は見てたし案件の処理も会長はと微妙に違うし」
「でもそれでどうして皆守だと思うわけ?」
「この匂いだよ。あいつがあのパイプ銜えはじめてからも何度かあったし。でもその時はこんなあからさまに残り香なんかなかったから。───なんか知らないけど副会長って存在は秘匿されてたっぽいから今でもそれを厳守するつもりならいくらあいつでもこんな真似しないだろう?」

 だからもう解禁なのかなーと思ったんだよ。
 なんだっけ?地下の遺跡?あれが危なかったからあんなこと言って俺たちを近づけなかったんだろう?それがまーああなっちゃって結局もう生徒会も余計な仕事なくなるだろうし……それに今まで消えてた奴らってそれ関係のヤバい奴らだったんだろう?にしたってただの学生にそんな胡散臭い奴らの徘徊するところを巡回させるのって危なくねぇ?あれ、どうしたんだ葉佩?

「い、いや……なんでもないよ」
「そうか」
「うんでもまだ公式に発表するっていうかたぶんしないと思うからそっと胸にしまっておいてねー」
「ああ……こっちは生徒会がきちんと仕事してくれれば何の問題もないから、ありがとな、これ」
「いえ、俺もただのパシリですからー」

 じゃあねーと内心のダメージを隠しつつ(ヤバくて胡散臭い輩で申し訳ない)明るく手を振って踵をかえす。

 なんだろう。
 この調子だと他にも副会長の正体知ってる奴いそうだよなー……というか。

(逞しすぎるよここの生徒達)


2006.05.07
眼鏡じゃなくてごめんなさい。

【clap】


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