愛・縁・奇・縁


 ちらりと視界に入った朱色に目を奪われる。
 頭上にはファンシーな字体で『ペットコーナー』

 本人は頑にただの《猫》だと言い張るが、外見年齢10代後半、実年齢もそれくらいの成人男子に───『ぷち某』とか『高級鰹某』とか『猫ま以下略』などというペットフードは買い与えられない。
 しかしヒトである時の彼の大好物がカレーでしかも三食どころか毎日でもいけるという時点で、実際は、猫である時よりも偏食がちなのだがそれは今は置いておいて。

 ついと無意識にのびた指が触れるとその小さな鈴がちりりとなって。
 赤。青。緑───色とりどりの首輪をみて、彼がまだ、本当に、ただの猫だったころにつけていた、紫色のリボンを思い出す。
 
 鈴のかわりに羽根をあしらった銀細工が首元揺れて。

「───なんだ、またつけるのか?」
「───!」

 気配もなく後ろから聞こえてきた気だるげな声に思わず身体が跳ねる。

「こ、甲太郎?」
「でもそれならこっちじゃないとキツい」
「……」

 これでも育ってんだよ。
 と、彼が指差したそれは葉佩が手にしているそれよりは少しだけサイズが大きなもので。

「あ、あのな甲太郎……」
「なんだよ」
「首輪だぞ?」
「そーだろ」
「猫用だぞ?」
「だから《猫》だって言ってんだろうが」
「……」

 いやまてそうじゃないだろう。
 いや確かに《猫》なんだが。
 
「どうした?」

 目の前の。
 どこか眠たげな雰囲気を持つ、青年の端正な顔からついと視線を下にうつして。

 その細い首に───。

(まて。しっかりするんだ)

 そっちじゃない人の方じゃない猫だ。猫の甲太郎だ。というか今更首輪なんてつけられるか!

 職業柄、無駄に逞しい想像力でしっかりと頭に浮かんでしまった絵が猫だったのか人だったのかは本人の名誉の為に伏せてはおくが。

「甲太郎、今日はカレーにしよう」
「何言ってんだ。当たり前だろう」

 その日の夕食はいつもより甲太郎の好みの品が多かったらしい。



2006.01.17
しかし葉佩さんはまだ、人(Ver.)より猫の方が好きです。愛してます。

【clap】


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