『拾ってください』
と、稚拙な字で書かれた張り紙を視界に入れた皆守の眉間に皺が寄る。
口に銜えているパイプから香るアロマの効果も一瞬で消えた。
犬猫ならまだしも。
「───消えろ」
「拾ってください」
地を這うような剣呑な声に眉一つ動かさずというかむしろ何故か笑顔になって張り紙付きの男が言う。
至極当然の事のように。
「あのな。どこの阿呆かは知らないがというか知りたくもないがひとんちの前で何やってやがる警察呼ぶぞ」
「ええっと俺の名前は葉佩九龍って言って葉っぱの葉に───」
「誰が自己紹介しろって言った不審者」
「いやだから聞いてよ俺の話あの俺実は───」
「携帯どこいったつーかもう面倒くせぇ……」
「ってちょっといきなり蹴るのは人としてどうなんですかーーー!!」
ぎゃーと叫びつつも皆守の渾身の蹴りを避けた男が言う。
「ちょ、ストップ!甲太郎!!」
「───っ!?」
甲太郎。
それは確かに皆守の名だ。
しかし何故それをこの相変わらず額に張り紙をつけたまま(であの蹴りを避けたのだ)の男が知っているのだ。
「正当防衛が過剰防衛になったところで俺の命には替えられまい」
「いやちょっと何その物騒な俺様発言」
「───悪く思うなよ」
頭のよわい可哀想な奴だと思って手加減したが今度は本気だ。
と、胸中で呟いて皆守は足を振り抜いた。
「───従兄弟?」
「うん。って連絡。いってるはず、なんだ、け、ど?」
「……」
「……」
「……」
「……ええっと、そういうわけなんで、よろしく、ね?」
2006.08.23
そして始まる新婚同居。
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