初恋3秒


 ふわふわの髪にどこかぼんやりとした瞳。
 お日様の匂いとまっさらな石鹸の匂い。

 そこは九龍の見つけた九龍だけのとっておきの場所だったのに。
 洗い立ての白いシーツの中で、起き上がった誰かはまだ眠たげにぱちぱちと瞬いて。
 不意に。
 薄い色の瞳が九龍を真っ直ぐ見た瞬間。

(───え?)

 なんだろう。 
 顔が熱い。
 どくんと何かが。

(───な、なに!?)

 何かが。
 何かを掴みかけた瞬間───。

「───誰だテメェ」

 夢見るような視線がすぅっと細くなり、ふわふわの髪に縁取られた幼さを残す顔の、愛らしい唇が紡いだ言葉の粗雑さに、九龍は掴みかけたものがガラガラと壊れていくのを感じた。

「───以上、初恋でした」
「へー九ちゃんて小さい頃から皆守クンのこと好きだったんだねー」
「3秒で終わったけどねー」
「……ちょっとまて」
「なんだよ」
「どーしたの?」
「どうしてそこで俺が出てくるんだ?」
「どうしてってだって俺のお気に入りの昼寝場所ですやすや眠ってたこーたが男だなんて思ってなくてさー……さんさんと降り注ぐ陽の下で眠るこーたはそりゃあ可愛かったのに可愛かったのに!」
「そんなに可愛かったの?」
「そりゃあもう。どこの天使かと!いやマジで!この天パもわかめだなんて思えないくらい!」
「───オイ」
「それが口を開けば阿呆だの馬鹿だの間抜けだの……百年の夢もいっぺんに冷めるっちゅーの」
「……」
「おまけに誕生日がちょっと早いっていうだけで兄貴面しやがって……」
「……」
「いたいけな九龍君の純粋なハートを弄んだばかりか身も心もずたぼろにした挙げ句あっさりと違う男についていってそれ以来音信不通だったくせに!たった十数年で花のような顔が!天使のふわふわが!眠い怠いのカレーアロマ星の不健康優良児に!かえせ!俺のかわいいこーた!」



2006.04.21
そういうわけではばあろ兄弟設定弟失恋秘話でした(爆)

【clap】


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