続・愛は痛い
「痛い……」
「そりゃ地面に顔面から突っ込めばな」
「その原因はこーたじゃないか……」
「お前がちんたらしてるからだろうが」
ああ言えばこう言うというのか皆守はとまらない。
元々口で勝てるとは思っていないがそれにしても。
(どーしてこういっつもだるだるなくせにこういう時だけイキイキとしてんのかなー)
といつものようにアロマパイプを銜えたまま、人を冷たい石の床に正座させ懇々と説教をしている皆守を見上げる。
この遺跡には魂の井戸という便利システムがあるのだが、それで怪我を癒すことすら皆守の許可がいるのはどういうことだろうと今更ながら思わないでもないのだが、九龍もたかが擦り傷程度でお世話になろうとは思ってはいない。
いないが。
その擦り傷の原因のほとんどが皆守なのだからもう少し、こう、
(分かりやすくやさしくしてくれてもいいのになー)
と内心では思うが口にしない。
本人が思っている以上に、この半分だけ血の繋がった兄弟は優しい。
たとえそれが赤の他人であってもおそらく彼は口では何のかんのと言いながら見捨てることができない性分なのだ。ということはここ数日の付き合いしかない九龍でさえ気づく。
「───聞いてるのか九龍」
「え?あーえーっと、」
「……」
正直に聞いていませんでしたと言うか適当に誤摩化すか逡巡したのはごく僅かの間で。
「……フォローしてくれるのはすごーくありがたいんだけど、できれば、もう少しだけ、優しくしていただければ……」
「……」
「け、蹴るのだけは勘弁してもらえたら……」
「……悪かったな」
「いやごめんちょっと言ってみただけこれからは気をつけってあれ?」
何か今めずらしい言葉を聞いたような気がするんだけど。
と、ひょいと視線を皆守にやる。
「こーた?」
「……仕方ないだろう」
あれ幻聴?と思っていると、皆守がついっと視線を外す。
「蹴りやすいんだ」
「……へえ」
「……ああ」
「……」
これ以後、この話題が二人の間で交わされることはなかった。
2006.04.22
何かこうつい蹴っちゃうらしいです皆守さん。
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