食べ物を粗末にしてはいけません


 今日の夕食。
 皆守特製カレー。

「カレーーーーーーー!!」
「ば、な、───飛び込むなこの似非あざらし!!」

 と、皆守がめずらしく絶叫した時には後の祭り。

「辛ーーーー!!」
「そっちじゃねぇだろう!」

 カレーライスに思いっきり体ごと突っ込んだ白い毛玉は見事にカレー色に染まっていた。

 そしてその数分後。

「阿呆」
「……」
「馬鹿」
「……」
「脳無し」
「……」

 風呂場ではなく備え付けの小さなシンクで食器用洗剤で洗われている白いはずの毛玉。

「ぶくぶくです」
「───沈めるぞ」
「ごめんなさいもーしません!」
「ば、跳ねるな!」

 皆守の手の中で白い毛玉がびたんびたんと尾っぽを動かす。
 その所為で水と泡が飛び散ってますます皆守の機嫌は下降する。
 けれど九龍を洗う手はやさしい。
 泡まみれになりながら九龍はほんのちょっぴり落ち込む。
 だって。
 
(こーちゃんはカレーの王子さまなのに……)

 カレーを粗末にしたら(そのつもりはなかったが)それはもう怒られるに決まってる。
 もしかしたらもうカレーは食べさせてもらえないかもしれない。

「!!!」
「……どうした?」
 
 びくん。とおかしな顔で固まった手の中の毛玉の様子に気づいた皆守が訝しげな声をかける。
 水に突っ込んでも泡まみれにしても平気だった毛玉がここにきて挙動不審となればさすがの皆守も少しくらいは不安になる。
 そんな皆守と何故か眼を潤ませている白い毛玉の視線があって。

「こーちゃん……」
「……なんだ?」
「おれはもう、こーちゃんのカレーを食べられないのですか?」
「……阿呆か」
「やっぱりですかー!」
「いいから黙っとけ」

 流すぞ。
 と、じたばたと暴れる白い毛玉をお湯で濯ぎつつ、皆守は小さく笑う。
 本当に。

(阿呆だ)

 それからさらに数分後。

「こーちゃん」
「……なんだ」

(やっぱりなのですねー……)

 テーブルの上にはカレー皿がひとつ。
 九龍がダイブしたカレーはきれいに片付けられている。
 もうない。
 ないのだ。

(カレー……)

「泣いてんのか涎垂らしてんのかどっちだ」
「りょうほうです」

 うう。とさめざめと涎を垂らす───否、泣く白い毛玉に皆守は無言でスプーンを差し出す。

 すると条件反射か本能か。
 さめざめと泣きながらも毛玉は大口を開けあむ。とスプーンにのせられたカレーを食べた。
 食べて。
 
「───カレー!?」
「……なんだそりゃ」
「おれいま食べた!?脳と胃がみせたやさしくも悲しい夢じゃなくて!?」
「……」

 パタパタと両手(?)を動かして落ち着かない毛玉に皆守はまたもや無言でスプーンを差し出せば。

「───これで問題ないだろう?」

 ぱっくりと大口を開けてスプーンを含んだ毛玉が、しっかり食べ切った後、こーちゃんこーちゃんだいすき。と感極まってカレーまみれの顔をぐりぐりと皆守の袖に押しつけ「学習しろこの毛玉!」と壁に投げつけられたのはその十秒後。



2006.11.27
まめといえど葉佩さんですから。
というかまめは意外と丈夫なので無問題。
そしてまめくろーにアロマが「カレーの王子様」と教えたのは緋勇さんです。

【まめカレー】


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