初恋は甘くないのです


 いつものようにマミーズで昼食をとった皆守の前に食後のはコーヒー。
 九龍の前には───。

「……」

 初恋パフェ。

 なんだそりゃ。というのが皆守の率直な感想だ。
 ヨーグルトと生クリームにオレンジにさくらんぼ。
 誰が頼むんだこんなもの。
 と思ったら目の前にいる白い毛玉が頼んだ。
 
(つーか、どうやって食う気だこの毛玉)

 名前がどうあろうとパフェはパフェだ。
 普通の人間だったら(という定義も何か馬鹿馬鹿しいが)何の問題もないだろうが。
 相手は手の平サイズの似非海豹。
 底の浅いカレー皿にダイブ(勿論、空なわけがない)してカレー色に染まって皆守に懇々と説教をくらって以来、その手の行動はしていなかったのだが。
 
「……」

 ぼてぼてと。
 皆守ができれば忘れ去りたい過去に思いを馳せている間に、毛玉が銀色のスプーンを持って近づいてきて。
 テーブルの上に置かれていた皆守の手にそれをそっと握らせる。
 つまり。

 あーん。

「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」 

 かぱっと大口をあけている毛玉との間に沈黙が落ちる。
 葛藤というか不毛というか───けれど皆守以外の誰もがそうなることは予想できたわけで。
 つまり端から見れば「どうせするんだからさっさとすればいいのに」という無言の重圧に耐えきれなくなったわけではないのであろうが。

 皆守のスプーンを持った手があがる。
 天辺のサクランボは避け、その周りの生クリームを一匙掬って。

「きゃーーーーーーーー!!!!!」
「───甘い」
「こ、こーちゃんこーちゃん!!」
「うるさい毛玉」
「おれの、おれのはつこいーーーー!!!」
「変なところで区切るな!!」
「はぎゅ」

 そのまま毛玉の口に運ぶのが何か業腹だったので自分で食べてみたのだが(その時の九龍の顔は『ムンクの叫び』を超えたと皆守は思った)普段、食べないものの甘さは嫌いではないが好んで食べるほどのものではない。
 と納得したところでぎゃんぎゃんと喚く白い毛玉の口にさくらんぼを突っ込んだ。



2007.01.13
まめですから

【直感+2】


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