《宝探し屋》アロマ小ネタsss
「亀急便でーす」
といういつもの声が聞こえ部屋の扉を開けるとそこのは段ボールが一つ。
頼んだ憶えはないのだが、差出人の名前を見て反射的に眉を潜める。
(今更なんだっていうんだ……)
どうせろくな物ではないと思いつつ、そんなものを廊下に出しておくことはできず、仕方なく部屋に入れガムテープを剥がしてみて、
「こーたろー今日はどうすんの?って何!?」
「……ちょうどいいところにきたな」
「こここここーたろーさん?華の顔が素敵にどえらいことになってますってうぎゃ」
「……お前、甘い物は平気だよな?」
「……平気ですが爽やか笑顔で俺を踏みつけるのはいい加減やめてください」
「持ってけ」
「スルー!?っていうか微妙に力入ってませんか甲太郎さん!」
という素敵な会話の後、なぜかというかいつものようにベッドに腰掛けどこか偉そうな態度でアロマをくゆらせる部屋主と、その足元でちょっぴりくたびれた風に九龍が座り込んで、テーブルの脇に置かれた段ボールの中身をひょいとのぞく。
「……こーたろーさん?」
なんですかこれは。と言いかけ思いっきり睨まれた九龍はとりあえず保身の為に黙る。
先ほどから不機嫌オーラをまき散らしつつ、それを紛らわそうとするかのようにアロマを吸いまくるものだから、いつもより花の香りが濃くなって、なぜか九龍は落ち着かない気分になるのだが、諸悪の根源はそれで多少は気分が落ち着いたのか、盛大な溜息とともに紙切れを九龍に差し出す。
『前略 甲ちゃんへ
この前の仕事先でお土産を買ったので送ります。
本当ならお蕎を送りたいところなのですが、郷に入りては郷に従えと言いますので、今回はこれを送ります。
みんなでわけて食べてね。
独り占めしたら駄目よ。
それとお父さんとお母さんは元気です。
甲ちゃんも体に気をつけて。
初めての探索で心細いこともあると思うけど、そういう時はお父さんとお母さんのことを思い出して……私たちはいつでもどんな時も甲ちゃんのことを見守っているからね』
「……」
「……」
実はこの後にも色々書き綴られていたのだが、それはどう読んでも、
「───何が仕事だってんだあのアロハ夫婦」
地を這うような低い声に九龍はそっと、その手紙をテーブルの上に置く。
それはつまり件の『ハメられた』云々発言の経緯というか顛末なのだろうと同封されてきた、明らかに観光ですという雰囲気の男女の写真を何枚か見て悟らざるを得なかった九龍はやはりここでも沈黙を守った。
そして箱の中身に視線を移す。
「───というわけで持っていけ」
なにが『というわけ』なのかはこの際おいておいて、気がつくと九龍は箱を抱えたまま甲太郎の部屋の外にいた。
「───あれ?」
いつもはカレーにしか向けられないとびっきりの笑顔に見惚れている間の出来事だった。
※※※
「はいお土産」
「……」
「えーっと、甲太郎のご両親から」
「───何故だ」
「引っ越しの挨拶?」
じゃあそういうわけだから!
と、『なにがそういうわけなんだ』と顔には出さず独白した生徒会長の手にハ○イアンホー○トのマカダミアナッツチョコレートを二箱押しつけていった九龍が、甲太郎の両親の願い通り、ハ○イのお土産を引っ越しの挨拶と称して手当たり次第配っているところに、事情を察した甲太郎がやってきて蹴り飛ばしたのはまた別の話。
2006.02.26
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