「……」
TVの前に陣取って熱心に見ているのは黒い仔犬だった。
仔犬と言っても小型犬と同じかあるいはそれ以上の大きさがあるのだが、本人はそのことを密かに気にしているようで、だが、それより人が犬になる。ということの方が気になる、というか気にしろよ。と密かに思う皆守は耳の先から尻尾の先まで真っ黒な毛玉が仔犬である。ということは気にならない。
が。
(……)
フローリングの床を。
ときおり。
ぱたぱたと。
掃除する───もとい動く、短くも長くもない黒い尻尾が。
「……九龍」
「……」
「……楽しいか?」
ぱたん。
と、その言葉に尻尾が振られる。
聴こえてはいるらしい。と思った皆守は、だらしなく壁に寄りかかったまま、膝の上の雑誌に視線を落とす。
「出る気か?」
「あははははなに言ってんの」
ブラウン管の中では犬とその飼い主が空飛ぶ円盤を巡って走ったり飛んだり掴まえたりしている。
「でも出るなら優勝だよね!」
「……どっちで出るんだよつーかやっぱり出る気かよ」
「こーちゃんと一緒なら俺頑張るよ」
「阿呆か」
「……商品がカレーなら?」
「───死ぬ気で勝て」
「甲太郎、目が本気」
かつかつと。
爪の音が近づいてきて、ぽふ。とベッドに飛び上がってきた黒い毛玉がそのまま足の間におさまる。
「邪魔だ」
「ぬくぬく湯たんぽの到着です」
器用に前足でリモコンのボタンを押してTVを消した黒い毛玉の。
「……うごけねーだろ」
ぽん。
と、頭を叩くだけで皆守は、そのまましばらく獣の好きにさせた。
2006.11.01
11月1日は『犬の日』というのでいぬろーネタでした。
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