ごってん。
 と、床の上に転がった衝撃で九龍は目を覚ました。

(あー寝ちゃったかー……)

 ひょい。
 と、ベッドに前足をかけて覗き込めば盛り上がった布団の端からうねうねとした髪がのぞいている。
 ほとんど電池が切れるように眠る皆守は、いつもなら、ベッドには入らずそのまま横になって眠ることが多いのだが、今日は違ったらしく。
 しかしそのなけなしの理性(というか無意識の行動だが)は自分のことだけでいっぱいっぱいで一緒に眠っていた黒い仔犬の存在をすっかり忘れたようで。

 おそらく上掛けを捲った時にそのままごろんと、転がり落ちたのだろうと。ぺたりと裸足の足を踏み出す。
 しんと静まった部屋の照明を消してベッドの隅に追いやられていた雑誌をローテーブルの上に置く。
 なるだけ音を立てないようにベッドに座り、くせのある髪にそっと触れる。
 あれだけ警戒心を張り巡らせていた皆守が、自ら触れることを躊躇っていたその手が黒い毛皮を撫でる動きはやさしい。
 どこかの誰かじゃないが、うとうとしてくる。

 でもその手は。

(俺を)

「……くろう?」
「ゆたんぽはいりまーす」
「……けるなよ」

 もぞもぞと。
 潜り込んだ毛布の中で。

(とりあえずはこのままでいいか)

 黒い仔犬の姿で九龍はその鼻先を大好きな人の胸に押しつけた。



2006.11.01
わんわんわん。の数十分後。
ちなみに、アロマが電池切れで寝ちゃった場合はいぬろーさんがベッドに入れてあげて電気消していそいそと仔犬に戻って一緒に寝ます。

【わんわんにゃん】


・top
・9ron
・novel
・home