黒い仔犬がベッドの下を行ったり来たりしている。
僅かに爪音を立て時折立ち止まり尻尾を一振りしてベッドにちょんと前足をかけ大好きな人の寝顔をじぃぃっと見つめる。
(……起きない)
四角い窓の向こうは青くそこに転々と白い雲が浮いている。
そこからじんわりとあたたかい光が部屋の中を満たして上掛けから覗くくせ毛をきらきらと輝かせて。
(……触りたい)
くぅと小さく鳴いて黒い毛玉は諦めたように床に前足をおろした。
カレーと睡眠をこよなく愛するこの部屋の主は現在その幸せな夢の世界の住人だ。
残念ながら古代の秘宝の力を持ってしてもその世界に毛玉───いや子犬───もとい九龍はいけないのでただ待っているのが現状だ。
以前、構って欲しくて眠っている皆守の上にダイブしたら問答無用で窓から放り出されて以来、大人しく待っていることにしたのだが。
かつかつかつかつ。
うろちょろうろちょろ。
ぱふ。
(……起きない)
かつかつかつかつ。
うろちょろうろちょろ。
ぽふ。
(………………起きない)
「こーたろー……」
にゅう。と鼻先を突き出してベッドに顔を出し、相変わらずすやすやと眠っている大好きな人の寝顔を見つめる。
こういう穏やかな───年相応の貌は中々見せてくれないので、ある意味気長と言えばそうなのだが。
できればその穏やかな眠りを守ってやりたいとは思うのだが。
かつかつかつかつ。
(……触りたい)
かつかつかつかつ。
(……声が聞きたい)
かつかつかつかつか。
「───ッ!?」
むご。
と、胴体を掴まれ何事!?と思う間もなく腹を掬われ持ち上げられる。
それがベッドで眠っていたはずの人間の手だということに気づいた頃には。
(───えええ?)
ぱふり。と軽い音と同時に視界が覆われかわりに───。
(あれ?)
かすかに透ける光とあたたかいぬくもりと命の刻む音に自分が愛おしい人の腕の中に抱き込まれていることを知り。
(あーえーうー……)
ぱたぱたぱたぱた。
せわしなく動いていた尻尾が止まるのはそれから3分後。
2007.03.29
つまりいっしょにお昼寝(爆)
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