「……」

 ちょっと目を離した隙に。
 という程度に時間だった。
 皆守の主観では。
 めずらしく。
 そう───めずらしく外で待っていると言った男はいつのまにか黒い毛皮を纏い頭の上に先端に白いボンボンのついた赤い三角帽子を被って───ぱたぱたと尻尾を振っていた。

「……」

 そう。
 尻尾。
 触ればさらりとした触感の黒い黒い尻尾だ。
 
「……」

 それと同じように真っ黒な目が真っ直ぐに己を見つめているのを感じながら……赤い帽子と首輪に黄金色の鐘をつけた真っ黒な大型犬を遠巻きにしながらも携帯のカメラで写真を撮る音や「かわいい」だの「あの人が飼い主かなー」だの「大きいのに大人しいのねー」だの「さわりたい」だのいつのまにかできたギャラリーの声に、ポケットに仕舞っていた銀色のパイプを取り出し火をつける。

 しかし精神を落ち着かせるはずのラヴェンダーの香りはふわふわと漂うだけで皆守の心を落ち着かせてくれることはなく……。

「……」

 人としてのプライドはどうしたとかお前いつの間にそんなものとか。
 色々言いたいことはあるのだが。

「……」

 ぱたぱたと揺れる尻尾。
 きらきらと輝いているように見える目。
 
「…………九龍」
「わん」

 わんじゃねえだろう。とは思ったが。
 
「いくぞ」
「わん」

 とりあえず。
 これ以上好奇の目に曝されるのは本意ではなかったので、説教は帰ってからきっちりしてやる。と心に決め───歩き出した皆守の隣りに、同じように並んで歩き出した大型犬からチリリと小さな鐘の音がして。
 ふと落とした視線の先で。

 似合う?
 とばかりに大きく振られた尻尾に───。

(触っていいのは俺だけだ)



2007.12.22
いぬろーペケマスネタだと言い張る篇でした。

【コスプレ@わんこ】


・top
・9ron
・novel
・home