「───おれがあいてだ。わるくおもうなよ……?」
その台詞は完全にひらがなだった。
少なくとも葉佩にはそう聴こえた。
目の前には学生服姿の親友が立っている。
そう。
学生服。
なぜそう言うのかはわからないが学ランだ。
どこにでもある───というのはこの学園の制服は男女とも個性的だったがともあれ、中に着ているTシャツまで同じだった。
ただ一つ。違うところがあるとそればそれはアロマパイプだった。
銀の、細い鎖に繋がれて炎マークの上で揺れている。
それはそうだろう。
彼は今───。
「甲太郎……」
「きゅーちゃん?」
(ぎゃーーーーーっ!!)
よりにもよってここで『九ちゃん』呼びかよ!
と、九龍は崩れそうになった膝に手を置いて耐える。
とにかくヤバい。
何か分からないがヤバい。
色々な意味でヤバい。
だってどうしたって。
「こ、甲太郎……」
「?」
(こんなちみっ子と闘えるわけがないじゃないか!!)
そう。
目の前には小さい皆守甲太郎。
結局、彼は己のエリアが解放されても元には戻らなかった。
すなわち《生徒会副会長》
今、彼の後ろの闇の中で静かに佇んでいる───子供のお遊戯会に来た父親のような風情で頷いている(このちみっこがあの長台詞をカンペ付きとはいえ言い切ったことを我がことのように喜んでいるのだろう)《生徒会会長》の懐刀的存在である。
本来は。
(いやもう甲太郎が副会長とかそういう次元の問題じゃないよこれは!)
とゆーか本気て闘わせるつもりあるのかなこの人達!
と、その阿門の後ろで───家庭用ビデオを構えている(しかもバッチリ録ってる)バー九龍のマスター……果たしてその実態は阿門家の忠実なる執事である千貫の姿も見えてしまって今度こそ葉佩は膝から崩れ落ちる。
(ああああもう……)
「くろ?」
小さな皆守が長台詞が書いたメモ帳(愛と勇気だけが友達の友達のアレだ)を持ったままこちらにテトテトと歩いてくる。
その顔はいつもと同じようにどこか眠たげで、自分の役割を知っているのかどうかの判別はつかない。
けれど。
「……わるいひと?」
「……ええっと、」
そう問われれば、今までの自分の所行を思い返すまでもなく。
(悪い人だよなぁ……俺)
「あもんが、くろうは、しょばつしないとだめだって……」
(いやでもだからってここで甲太郎を出すことはないじゃん)
「だから、」
ぺちん。
と、九龍の額に小さな手が当たる。
「……これでもうわるいことしない?」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……しない」
「───なんだその間は」
「うるさいぞ外野!つーかそのカメラこれを録りたかっただけだろう!?」
「なんのことだ」
「よく頑張りましたな、甲太郎様」
「もう、くろ、わるいことしないって……だからしょばつ、しない?」
「ああ───お前に免じて許してやろう」
「ようございましたね。ではお約束通り、今日の夕食は特製カレーにいたしましょう」
「うん」
「くぅ……何そのほのぼの!!っていうかカレー!?カレーに負けたの俺!!」
《誰だ? 我が室を侵す者は?》
「うるさいよ外野!!」
2006.11.09
この後、長髄彦をトレハン、坊ちゃま、千貫さん、さよまゆ、マダムでボコボコにしてめでたしめでたし(笑)
とりあえずちみアロに学ラン着せられたので満足(え)
【最強副会長】
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