黄昏は遠く彼方に


「名前は?」
「皆守甲太郎です!」
「年は?」
「ピッチピチの18歳です!って書いてあるでしょ、書類」
「いや一応ね。形式的なものだから───というかバディでいいのかな?ハンターになる気はない?」
「いえ!甲太郎は俺の妻───ゴフ」
「……勿体ないなぁその戦闘能力」 

 きれいな放物線を描いて蹴り飛ばされた将来を有望視されている(自称)トレジャーハンターが鈍い音を立てて床に落ちるのを視線で追うそぶりすら見せずロゼッタ協会の面接官がなにやら書類に書き込む。
 日本語どころか英語ですらない言語を読む気力は皆守には存在せず、むしろ慢性的な寝不足にあくびを噛み殺すので精一杯だ。

「こ、甲ちゃん……」

 だからその面接官の後方でH.A.N.Tに死亡を確認されそうな《宝探し屋》の存在も気にならない。
 とはさすがに言えないが。

「というか俺はそこの自称《宝探し屋》に問答無用で拉致られたんだが」
「H.A.N.Tを持っているということはヘボでもアホでも《宝探し屋》だから。……って甲太郎君、」
「皆守だ」
「ああうんそれで甲太郎君」
「……」

 なんだろう。
 この既視感。
 しかも嫌な感じの。

「帰りたいなら帰れるよ」
「───ッ」
「ちょ、異議有り!」
「黙りなさい。───父さんは甲太郎君に聞いてるんだ」
「───は?」
「なんだよ!自分だって甲ちゃんの写真見せたらよくやったって言ってたじゃないか!!」
「それはお前達がもうラブラブだからと思ったからだよ」
「ラブラブだよ!」
「でも彼はお前に拉致監禁された挙げ句無理矢理身体を───」
「キスはしたけどそこまではいってない!つーか無理矢理ってなんだよ!!」
「なんだ……キスしかしてないのか」
「なにその憐れむような視線!!」

「───ちょっとまて」

「なに?」
「なにかな?」

 何か今、とんでもないことを聞いたような気がするのだが。
 と、皆守が口を挟めばよく似た動作で二人とも首を傾げる。
 その姿に、一瞬、くらりと揺れたような気がするのだが、それでも事実を確認しなければらないという使命感にありったけの気力を奮い立たせる。
 しかし言いたいことは山ほどあったのだが、口から飛び出た言葉はたった一つだった。

「とうさん?」
「ああ、うん、これ、父」
「はじめまして。愚息がいつも迷惑をかけていたようで……」
「迷惑なんかかけてない!」
「頭も顔も悪くはないはずなんだがどうにもネジが1、2本、緩んでいてね……これからも迷惑をかけるだろうが、よろしく頼むよ」
「だーかーらっ!」

 不承不承で事実を認めた九龍とそれを笑顔でいなしているロゼッタの面接官の顔を交互に見ながら、皆守は日本に帰りたいと切実に願ったが、おそらくその願いは叶えられることはないんだろうな。と、どさくさに紛れて託された言葉を聞き逃せない、己の身体能力の高さをはじめて呪った。



2006.06.11
何気に『暁〜』の続き。そんなわけで気がついたら葉佩父公認なアロマ。

【おしあわせに?】


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