割れ物注意
(……なんだかなぁ)
眠る皆守を見ながら葉佩はため息をついた。
明かりの消えた部屋はそれだけで何か冷たい。
たとえあたたかい寝具に包まれ深い眠りに落ちようともだ。
(なんでかなぁ……)
初めて会った時、俺はこいつなら一緒に行けるんじゃないかって、いつか一緒に行こうと言うつもりでいたのに。
眠る皆守の、いや、部屋全体に染み付いた花の香り。
本人は気づいているのかいないのか。
香りを変えずに中身を変える手腕はさすがだと思う。
(大事なもんならちゃんとしまっとけよ)
執行委員をつくり補佐までつけ休職という大義面分とアロマという免罪符。
そこまでするならいっそ丸ごと、容赦なく、すべての記憶を───副会長という鎖を外してしまえばよかったのに。
あるいはあの赤毛の女のようにずっとずっと誰に何を言われても傍においておけばよかったのに。
そうしておけば。
(俺なんかがうっかり触って壊れるようなことにはならなかったのに)
眠い怠いと繰り返す怠惰な男は何故かいつも傍にいて。
そして少しずつけれど確実に欠けていく。
そんな様子を。
(冗談じゃねぇ)
この男の眠りは元々浅かったのに。
今では誰かが傍にいても気づかぬ程深く眠る。
起きていても微睡んでいる時間が多くなりそうしてゆっくりと───。
(駄目だ)
これでは連れていけない。
ここから連れ出せない。
こんなにも壊れやすいものを葉佩は今まで触ったことがなかった。
ほんの少し力を入れただけで粉々に砕け散ってしまうようなものは、葉佩には扱えない。
なのに。
気がつけばそれは手の中にあって。
(どうしたらいいんだ)
結局、葉佩は、手の中の壊れやすいものを壊れないように大事に抱えているしかなかった。
途方に暮れながら。
けれどそれを他の誰かに渡すことなど思いつきもせず。
2006.12.13
初恋?(え)
びみょー。と思いつつ小ネタないのもなにか落ち着かないというか書いたらあげたい貧乏性でup
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