ねこ


「……」

 そして今その虎は眠っている。
 半強制的に枕にされた俺の足はすでに感覚がなくなってきているが、その上に頭を乗せている甲太郎の顔は、ほんのりと赤い。
 おそらく微かに開いている唇に顔を寄せれば酒臭いだろう。

 つまりこの虎は酔うとただの猫になるのだ。
 普段の───照れ隠しもあるのだろうが───凶暴さはなりを潜め、ただ穏やかに眠る姿は、愛おしい以外のなにものでもない。

 まあ起きたら蹴りの一つや二つ飛んでくるだろうが。
 それでも。
 人の世界でその力を持て余している猛獣が、その爪も牙も眠らせ無防備でいられる時があるのなら。
 その無防備に眠る姿を俺に預けてくれるのなら。

 それに。

「つーか相変わらず酒弱いよなー……」
 
 癖のつよいわりにやわらかな髪をそっとつまんで口付ける。
 
「いまのうちにいっぱいチューしちゃえ」

 どんな猛獣だって眠ってる時は可愛いもんだろ?


←back

2006.03.29
虎は酔っぱらうと眠る(猫)というオチの為の前半でございました(逃走)

【clap】


・top
・novel
・home