アニバーサリーハッピーセット:01
PM 11:08
「……」
「よぉ、遅かったなー」
「ひーちゃんそれ俺の!」
「やあ、よくきたね」
謎の(しかしバレバレの)メールで指定された都内某所にある骨董屋の扉を開ければ、知った顔が3つ。
いやまあこんなことじゃないかな。なんては思ってたけどここまで予想通りだと何かこう、さあ……。
「つーか甲太郎のカレー!!」
「うまかったぞ」
「今日は特に、な。……昨晩から仕込んでたみたいだし」
「───ッ!!!」
畳に卓袱台を囲んで大の男が3人、そこにカレー皿なんてわかりやすい証拠は置いてなかったけど、酒精に紛れて漂うカレーの残り香を感じ取れない俺ではない(特に甲太郎のカレーは)
いったいいつから飲んでるんだというか俺の分のカレーは!?という切実な問題の答はあっさり出た。
「───ない、の?」
「ない」
「わりぃ全部食っちまった」
「すまない」
遺跡でトラップに引っかかった時だってこんなにダメージ喰らわないっていうのに、嘘だろーと愕然とした俺にこの家の主がそっと飲み物を渡してくれた。あんなにあざとい商売してる人とは思えないくらい極々普通の優しさにそっと涙がって、
「なんでウーロン茶!」
あんたらの前にあるのはなんなんだ!と500mlのペットボトルを持ったまま指差せば、声を揃えて、
「未成年」
「お酒は二十歳になってから」
「そーゆうことらしいな〜」
約一名能天気な人がいるけど他の二人は絶対わかってて言ってる!俺だってあと2ヶ月後には二十歳だっての!だいたい主賓は、
「……だからって甲太郎、つぶさなくてもいいじゃん」
「いやまさかこの歳になって飲んだことがないとは思ってなくて」
「ここまで弱いなんてなー……」
「二日酔いに効く薬ならあるから心配はいらないよ」
前後の台詞と矛盾したことを宣い、親切を装って商魂逞しくにこやかに朗らかに爽やかに笑いあう3人のその背後の壁際で座布団を枕に一応毛布に丸まっているのが本日の主賓、俺の恋人(ここ重要)、カレーの天才、───めでたく二十歳となった、皆守甲太郎。
カレーをつくらされ(まあこれは頼まれなくなって自主的にやるけど)酒を飲まされ潰されてそれでいいのか甲太郎!と、肩をつかんで揺さぶってやりたいけどそんなことをしたら俺が蹴られる(年に関らずヒエラルキーの底辺は俺だわかってるんだ)
畜生これが歳の差かよ。と言えばきっと三者三様、俺みたいな若造が太刀打ちできないことを言ってくるに決まってる。
しかし。
しかしだ。
「てゆーかこの『皆守甲太郎は預かった。返して欲しければ云々』ってどこのB級映画ですか」
「嘘は言ってないだろう」
「言ってないですけどっていうかメルアドで龍麻さんってバレバレなんですけど!」
「まーまー座れ未成年」
「その未成年の前で酒なんぞ飲むなー」
「うまいぞ」
「うぎゃあもうちくしょう」
「それよりひとつ訊きたいんだが、」
「……なんでしょうか」
そっくりだよこの従兄弟。と眠っている甲太郎のというか静かに上下する毛布のかたまりと、横で高そうな酒(いいなぁ)を水のように煽る龍麻さんに視線を流す。
「お前はあいつを連れていくのか?」
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