アニバーサリーハッピーセット:end


「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……こーたろー?」
「……」
「───……寝落ち!?」

 規則正しい心音とすうすうと安らかな寝息が首にかかってでもいやまさかって思って視線だけで甲太郎を見れば寝てやがりますよこの男!俺に乗っかったまま!襲うぞこんちくしょう俺の純情返せー!ああもう幸せだけど切ないっていうかいつまで乗ってるんだお前とジタバタ無駄に足掻いていると、
 

「───じゃ、あとは若い人同士で」
「その辺の物壊すとこいつがうるせーから気をつけろよー」
「誰も彼も君と同じだと思わない方がいいんじゃないのか」
「うっせーよ」
「え、ちょ、まっ」
「ごゆっくり。そうそう明日ってもう今日か、とりあえず休みらしいけど、」

 若い人同士ってお見合いかよ!と突っ込む間もなく部屋を出て行く背中をただ見送るしかない俺に、最後に残った龍麻さんが、にっこりと、笑う。
 どこかで見たことのある笑顔に一瞬、のまれかけた俺のあいてる手にポンと何やら軽い物が渡されて。

「ご利用は計画的に」
「───いや、ちょ、た、龍麻さん!?」
「俺からの誕生日プレゼント。ちゃんとリサーチ済みだから」
「だ、だから───ッ!!」
 
 ほどほどにな〜。と闊達に笑って(どこのご隠居だよ)今度こそ龍麻さんも消えて(ついでに電気まで消してくれて)
 残されたのは。
 俺と甲太郎と───。

(どどどどーしろと!?)

 度の過ぎた親心か純然たる嫌がらせか、どちらにしろ今もし万が一甲太郎が目を覚ましたら何かまずいような気がするというか俺は何も後ろめたいことなんかないのにつーか有り得ないだろう!

(開封済みってなんだー!!)
 
 手の中の箱を思わず握りしめて、盛大に溜息をつく。
 俺の上には覆い被さるように眠っている甲太郎。
 懐かしい花の香りとあたたかい呼気と穏やかに時を刻む心音。
 
(そーいえば俺、まだ、『おめでとう』って言ってねぇ……)

 どころかまともに会話も交わしてない。
 しかもこいつは酔ってたから、たぶんきっとおぼえてないんだろうなぁと思うと少しだけ泣けてる。
 でも。 
 それでも。
 
(酒くさ……)

 静かに、起こさないように(起きないってのはわかってるけど)横におろした甲太郎をぎゅっと抱きしめて、ただいまとおめでとうのキスをする。
 手探りで毛布を引き寄せて二人一緒に包まって、目を瞑る。
 日本に帰ってきてからというか甲太郎の誕生日を思い出したあの瞬間から、微妙なテンションでハイになったりローになったりとわけのわからない緊張感が切れるとなんだか疲れがどっときた。
 考えていたことの半分も言えず結局ほとんど何もできなかったけど。

(まあいいか……目が覚めたら……起きたら、)
 
 おはようと。
 おめでとうのキスだ。覚悟しろよ、甲太郎。
 来年も再来年もずっとずっと。


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2006.04.12
何はともあれ誕生日おめでとう、アロマ。
何が死に物狂いなのか、何故アロマは魔人組と一緒にいたのか、についてはblog02のこちらこちらをどうぞ(ぐだぐだですが)

【はぴば】


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