「……」
次に目が覚めた時、外は暗く室内は白々と明るくベッドの中には皆守しかいなかった。
(……あの阿呆)
ガキじゃあるまいし。
と、思うように動かない身体に内心舌打ちしつつうつ伏せになる。
真新しいシーツの感触に目を瞑る。
散々色々されたりしたりした身体はいまだに熱を燻らせているがそれもどこか心地好い。
そのままとろとろと微睡みに意識を委ねかけたところで───。
「起きてよ先生」
「……誰が先生だ」
人を食ったような声音につい半眼で睨みつければ。
スーツにネクタイという他所行き用の格好の男が眼鏡越しに皆守を見下ろしていて。
「お前だお前。皆守先生。可愛い生徒達が先生のお家まできてたわよー」
「───は?」
驚きに目を見張る皆守の、寝乱れたままの前髪を梳きながら、どこか面白そうに言葉を続ける。
こういう貌をする時はろくなことがない。と経験上知ってはいるが、それを止められるわけもなく。
「俺がレリドンの阿呆共を出し抜いて無事お宝をゲットレしたんだから、お前が教師としてあの学校に潜入してそれとなくターゲットを護衛をする必要もなくなったわけで。どうせ明日から冬休みなわけだし。速やかに撤収作業及び事後処理の確認の為にお前のアパートまで行ったら……ええっと、ひょろっと背の高い茶髪とふわふわな天パの子と護衛対象の」
「───高岡と沢木と原田が?」
「ああうんそーたぶんその3人組み。っていうかお隣に用があったみたいなんだけど───とりあえず『先生どうしたんですか?』って訊かれたから『駆け落ちするんだ。俺と』って言っておいたから」
「───は?」
「だから駆け落ち。どうせもう会うことなんかないんだし。クリスマスのサプライズってことで」
「───おい」
「そしたら『お幸せに』だって……」
最近の子ってすごいねー。と、本気で感心しているらしい葉佩に皆守はげっそりとため息をつく。
確かにもう会うことはないだろうが、それにしても、よりにもよってこの男と。
駆け落ち。
あの3人組がそれを信じる信じないはともかく(おそらく信じるのだろうが)
駆け落ち。
この人畜無害の仮面を被ったヒトデナシと?
「……だったらまだ複数の金融業者に追い立てられた挙げ句夜逃げの方がマシだ」
「そこまで嫌か俺と駆け落ち」
「嫌に決まってんだろう」
「突っ込まれるのはイイのに?」
「誰も頼んでない」
「そのわりにはいつも最後の方には自分から腰───」
「……何か言ったか?」
「いいえ先生」
なんでもありません。と、葉佩は度の入っていない眼鏡を外す。
「……おい」
上着を脱ぎ、ネクタイを緩めた腕がシーツを捲り、裸の肩を抑え仰向けにされ。
「まあ、そういうわけだから、駆け落ちの続き。しようね先生」
まずいと思った時にはすぐ目の前に男の顔があり、それに気を取られた隙に両手を掴まれた。
「九龍ッ」
「なに先生?」
「ば、おまえ、ついさっき散々やったじゃねーか!」
「やだなぁ先生、あんなので満足しちゃったわけ?まだ若いのに、枯れてんじゃないの?」
「───なッ」
にっこりと。
いっそ爽やかと言ってもいいような笑みを浮かべながら───葉佩は解いたネクタイを皆守の手首に器用に巻き付ける。
「おいっ!」
「はいプレゼントの出来上がりーそれではゲットトレジャーミッションコンプリートハッピーホリデー?」
「九龍ッ!!」
拘束された両手でもがいたところで、抵抗は弱い。逆に鎖骨から耳朶まで舐められ身体を震わせると、直接鼓膜に熱を吹き込まれ。
「───あんなんで足りるわけねーだろうこの馬鹿アロマ」
「───ッ」
不遜な、けれどどこか切羽詰まったその声に。
(……)
ついうっかり絆され、あろうことか可愛いかもしれない。などと思ったことを後悔するのはそれほど遠くない、未来。
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2006.12.24
ハッピーホリデーメリークリスマス(呪文)
と、ともあれ、9ronペケマスアンケ2位『先生@アロマ』篇でございます。
うっかり先生@アロマに票を投じてしまった方々、すみません。そしてありがとうございました!!(逃走)
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