「───どう思う?」
「……あのねぇ、先生。何も今それ言わなくてもいいでしょうが」

 これから突っ込もうって時に萎えるでしょ。
 と、口では言いつつもその動きが止まることはなく、そのまま突き上げられる。

「ぅあ、」
「それともなにか、お前は誰にでもこうやって足開くわけ?」
「───ッ」

 ねぇ先生。
 と、明らかにおもしろがっている口調で葉佩が顔を寄せてくる。

「……ん、なわけねぇだろ」
「そう?」

 目の前の、ろくなことを言わない口に噛みつけば、力任せに穿たれ、痛いと嘯く唇に塞がれ呼気ごと飲み込まれる。
 蠢く舌に眉を潜め、のしかかる躯を押し返そうと腕に力を込めようとすれば、やんわりと手を取られ指を絡めとられる。
 窓の外はまだ明るい。そんな時分から、何をしているんだろうと思わないでもないが。
 慣らされた躯は簡単に開き、思考はただ熱を追う。
 けれどその熱にすべてを明け渡すほど溺れるような年でもなく。
 目の前の、優男めいた貌をぼんやりと見上げる。
 黒い髪に黒い瞳。端整なつくりの顔に浮かぶ穏やかな笑み。
 あの頃はその仮面に救われ、無意識に甘え───その下にある本当の貌を知ろうとも、否、知ることになるとは思ってもいなかったのだが。
  
「それよりお前はどうなんだよ?」
「何?疑うわけ?お前の中にあるものを───……っていうかもしかして足りない?」
「ここに来たってことはそっちの仕事は終わったんだろッ…───」

 まあ久しぶりだからねー……とのほほんとした声音とは裏腹に、さらに激しさを増した動きに一瞬息を詰める。
 真っ昼間から何を盛ってるんだ。というのが正直なところだったが、ベッドに押し倒され服を剥ぎ取られ痩せた躯に乗りかかられても抵抗しなかったのだから同罪だろう。とは思うが。
 ただひとつ。
 気になることが。

「ああ、そのこと……勿論ミッションコンプリート。お前のお仕事もおしまい───よかったねぇ、年越さなくて」
「そう、か……ッ」
「そ」
「───ッ!!」

 だから余計なこと考えないで楽しんでよ。
 と、いっそ無邪気といってもいいような笑みを浮かべた葉佩に、余計なことなことじゃない。肝心なことだ。と声に出して反論できたのかどうか、そこから先の記憶は途切れ───。


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